左から、伊藤穰一氏、長谷部健氏、平井卓也氏
■「THE NEW CONTEXT CONFERENCE 2022 web3 Summer Gathering @Tokyo~未来からのテクノロジーの波をサーフしろ~」の全体紹介記事はこちら!
2018年半ばまで、日本がweb3の中心にいた――デジタルガレージ(以下、DG)とDG Labが6月14日、都内で開催したweb3をテーマとしたグローバルカンファレンス「THE NEW CONTEXT CONFERENCE 2022」では、「web3立国となるための日本の成長戦略」についても活発に議論された。冒頭の言葉はそこで語られたものだが、事実、日本は先行してブロックチェーン技術者を輩出し、法整備も進めていたのだ。日本がweb3の中心に返り咲くために、今、何をすべきだろうか。
日本の「web3立国」へ、方向性は示された
カンファレンスでは「web3で何が起こるのか」ということを軸に、アート、ゲーム、ファイナンス、セキュリティー、社会システムなど多岐にわたるテーマの講演と議論が行われた。そして、最後のプログラムが、ホストを務めるDG取締役兼専務執行役員Chief Architectの伊藤穰一氏、自民党デジタル社会推進本部長の平井卓也衆議院議員、長谷部健渋谷区長のパネルディスカッションだ。
web3の自律分散型組織や所有権の非中央集権化によって起こる変革を受けて、国家、自治体、web3企業と3つの目線で語られる「日本のweb3立国」とはどのようなものか。鼎談の内容を紹介する。
伊藤穰一氏(以下、伊藤) 今日のカンファレンスには、web3の第一線で活躍する日本人が海外から多数参加してくれました。彼らの中には「日本でやりたいけれど、できないから海外にいる」という人もたくさんいます。今年3月に自民党が出した「NFTホワイトペーパー」には、web3について、チャンスも課題も細かく全部書いてあります。これを読んで「こんなに分かっているのに、どうして動かないのか」という悲観的な声も出ています。何をどうすればうまくいくのでしょうか。中央、ローカル、双方のご意見を伺いたいと思います。
平井卓也氏(以下、平井) 法律を変えるのは時間がかかりますが、いわゆるソフト・ロー、ガイドラインをつくることはすぐできます。だから、順番にどんどん進めていけばいいのです。しかし、一方で日本では、消費者保護やアンチマネーロンダリングなど心配する声の方が大きくなります。そこに配慮していると時間がかり、web3の進化のスピードに追い付けないですね。
ただ、方向性は明確になっています。岸田内閣は「新しい資本主義」で「web3をやる」と宣言していますから。安心・安全に使えるための法整備、そして「突然、規制が変わるのでは」と事業者が恐れるようなグレーゾーンをなくしていくこと。これはやっていきます。
長谷部健氏(以下、長谷部) 渋谷区にはファッション、カルチャー、そしてIT企業が集まっており、交じり合って新しい価値を発信し始めています。この街のポテンシャルが最大限に生かされる環境を整えられればと、スタートアップ支援事業など行政もさまざまに動いています。ただ、ネガティブチェックは多く、「面白そうだけど怪しい話」にはなかなか食い付きにくいですね。ですから、小さくても成功事例をつくっていくことが必要だと思います。
伊藤 特区とかサンドボックスで実験をやっている国もありますね。日本ではweb3の特区はまだありませんよね。
平井 やるなら渋谷区ですよね。議会とかいろいろあるだろうけれど。
長谷部 ぜひ、つくりたいですね。新しいものにチャレンジするというのが渋谷という街の気質で、パートナーシップ証明というLGBTQに関する条例を議会に通して成立させた例もあります。「渋谷DAO」なんてできたらいいですよね。
伊藤 組織そのものの実験はありですね。DAO(Decentralized Autonomous Organization:自律分散型組織)は、地域でも、PTAとかもっと小さいコミュニティーもできるので。
長谷部 渋谷区ではスタートアップと組んで、区内で実証実験を続けてきました。特区ができれば法規制が緩和されたりして、さらにやりやすくなります。街の課題解決につながることなら、なお良くて、例えば、渋谷にたくさんある落書きはNFTと親和性が高いですよね。そういうネタはたくさんあると思うのです。
岸田政権が「成長戦略の柱」とするグリーンとデジタル
伊藤 地域通貨やグリーンはどうですか。CO2削減量を算出してブロックチェーン上でトークン化する、炭素トークンのプロジェクトは今、たくさんありますが、監査が難点になっています。一方では手数料が非常に高く、一方では安いものは怪しいものが多くて、最近は炭素市場全体が信用を失って下落しました。これから地域や市町村といったパブリックセクターが信頼できる炭素を出せればいいと思うのですが。
平井 日本はきっちりしているから、そういうのは得意ですよね。グリーンとデジタルは、まさに岸田政権の成長戦略の柱です。やるしかないですね。
伊藤 この成長戦略について岸田首相は、世界各地で発言していますね。国のリーダーがこんなに言及するのも珍しいのではないですか。
平井 本当は、口をふさぎたかったですよ。しかし、首相が「やろう」という強い意志を示したのは、大きいです。これから省庁でオペレーションレベルに落としていくということをやっていきます。
伊藤 成長戦略に入ると具体的に何が起こるのでしょうか?
平井 例えば、エネルギー分野なら、そこで既得権益を持っている人たちの反対があります。最終的に電気料金が値上げになるなら、一般の人たちも反対に回ります。「脱炭素より自分の生活」という人たちを納得させる世界観をつくる必要があります。「電力がひっ迫しているので、節電してください」というのも1つのストーリーです。
web3で地方自治体は世界とつながる
伊藤 なるほど。国はトップから下りていって規制改革していくということですが、渋谷区というレベルだと、どういうことができるのでしょうか。
長谷部 エネルギーや環境になると、渋谷区だけでは広過ぎますね。例えば、児童手当が適切に使われているかとか、ボランティアの方にトークンでうまく還元できないかとか、高齢者のデジタル参加を促すとか、街の課題とリンクさせて、実感を持ちながらやっていける範囲でできればと思っています。
伊藤 地方自治体のweb3については今後、どうなると思いますか?
平井 岩手県の紫波町が「Web3タウン」を宣言しましたよね。web3を始めると、地域にいない、世界中の人たちとつながれるのが一番大きいと思います。地域だけでは頭脳に限りがあるし、自分たちの地域の魅力も分からない。多くの人に関わってもらって、自分たちでは思い付かない発想で何かをやりたい。そういうことだと思います。山古志(新潟県)の「電子住民票」を兼ねたNFTも、世界中の人がトークンを買ってくれましたよね。
地方自治体にはある程度の信頼があります。最初はお金の匂いもしない。それでも最終的には、経済的に大きく貢献していくと思います。山古志のような事例が、これからどんどん出てくるでしょうね。
長谷部 新しいアイデアを外から取り込むというところでは、渋谷区はスタートアップの窓口を設けて、スタートアップビザもワンストップで発行するということをやっています。これもビザの期間を1年から複数年に延ばすとか、もっと踏み込んでいきたいと思っています。
平井 スタートアップビザについては、国もまさにやろうとしています。
日本の国際化は、今が最後のタイミング?
伊藤 少し話がそれますが、海外からスタートアップを呼び込むということでは、国が海外のファンドに投資するということも始めていますよね。
平井 日本にベンチャーキャピタルのマーケットをつくり、ベンチャー企業育成のノウハウを入れて、もっとインターナショナルにしていきたいということです。成功事例であるイスラエルのヨズマ・プログラムも参考にしています。やり方は変わってくるかもしれませんが。
伊藤 インターナショナルにするというのは、今が最後のタイミングかもしれません。オリンピックでかなり進んだのかもしれませんが。渋谷区にも、だいぶ海外から人が流入していますよね。何か仕掛けはあったのですか。
長谷部 初めは全くの受け身です。それでも「東京なら渋谷」「日本なら渋谷」と選んで来てくれる人がたくさんいて、しっかりこの球を打ち返さなければと思っています。多国籍のスタートアップをつくりたいというのが1つです。
伊藤 私も含めて海外から日本に来る側からすると、英語のインターフェースが圧倒的に少ないですよね。銀行も英語で操作できるのはわずかだし、領事館のページなんかでも重要な情報が英語で載っていないのです。海外から来る人は嫌な気持ちになりますよ。例えば「英語化DAO」をつくったら、英語化をやりたい人がかなり集まると思います。
長谷部 そういうのであれば、自分たちでもできますね。
伊藤 他にも渋谷に来る人たちの要望を実現するためにコミュニティーでお金を集めて、渋谷区にお願いするとか。ふるさと納税の外国人版みたいのがあってもいいですね。
長谷部 目的を持ったプロジェクトをつくるということですね。
平井 具体的ですね。ぜひ、ものにしたいですね。
伊藤 よろしくお願いします。本日はありがとうございました。
日本の成長戦略、国際化からweb3特区、地方自治体、DAOの可能性まで、多岐にわたる議論の中で、示唆に富むアイデアが幾つも飛び出した。前向きに変わろう、変えようとする三者の姿勢こそがweb3の世界観を体現しているといえるのではないだろうか。






