岸田政権が「成長戦略の柱」とするグリーンとデジタル
伊藤 地域通貨やグリーンはどうですか。CO2削減量を算出してブロックチェーン上でトークン化する、炭素トークンのプロジェクトは今、たくさんありますが、監査が難点になっています。一方では手数料が非常に高く、一方では安いものは怪しいものが多くて、最近は炭素市場全体が信用を失って下落しました。これから地域や市町村といったパブリックセクターが信頼できる炭素を出せればいいと思うのですが。
平井 日本はきっちりしているから、そういうのは得意ですよね。グリーンとデジタルは、まさに岸田政権の成長戦略の柱です。やるしかないですね。
伊藤 この成長戦略について岸田首相は、世界各地で発言していますね。国のリーダーがこんなに言及するのも珍しいのではないですか。
平井 本当は、口をふさぎたかったですよ。しかし、首相が「やろう」という強い意志を示したのは、大きいです。これから省庁でオペレーションレベルに落としていくということをやっていきます。
伊藤 成長戦略に入ると具体的に何が起こるのでしょうか?
平井 例えば、エネルギー分野なら、そこで既得権益を持っている人たちの反対があります。最終的に電気料金が値上げになるなら、一般の人たちも反対に回ります。「脱炭素より自分の生活」という人たちを納得させる世界観をつくる必要があります。「電力がひっ迫しているので、節電してください」というのも1つのストーリーです。
web3で地方自治体は世界とつながる
伊藤 なるほど。国はトップから下りていって規制改革していくということですが、渋谷区というレベルだと、どういうことができるのでしょうか。
長谷部 エネルギーや環境になると、渋谷区だけでは広過ぎますね。例えば、児童手当が適切に使われているかとか、ボランティアの方にトークンでうまく還元できないかとか、高齢者のデジタル参加を促すとか、街の課題とリンクさせて、実感を持ちながらやっていける範囲でできればと思っています。
伊藤 地方自治体のweb3については今後、どうなると思いますか?
平井 岩手県の紫波町が「Web3タウン」を宣言しましたよね。web3を始めると、地域にいない、世界中の人たちとつながれるのが一番大きいと思います。地域だけでは頭脳に限りがあるし、自分たちの地域の魅力も分からない。多くの人に関わってもらって、自分たちでは思い付かない発想で何かをやりたい。そういうことだと思います。山古志(新潟県)の「電子住民票」を兼ねたNFTも、世界中の人がトークンを買ってくれましたよね。
地方自治体にはある程度の信頼があります。最初はお金の匂いもしない。それでも最終的には、経済的に大きく貢献していくと思います。山古志のような事例が、これからどんどん出てくるでしょうね。
長谷部 新しいアイデアを外から取り込むというところでは、渋谷区はスタートアップの窓口を設けて、スタートアップビザもワンストップで発行するということをやっています。これもビザの期間を1年から複数年に延ばすとか、もっと踏み込んでいきたいと思っています。
平井 スタートアップビザについては、国もまさにやろうとしています。