デジタルガレージのグローバル・カンファレンス「THE NEW CONTEXT CONFERENCE 2022」が6月14日、都内で開催された。今年のテーマは「web3 Summer Gathering @Tokyo~未来からのテクノロジーの波をサーフしろ~」。1990年代初頭のWebの誕生から約30年が経過し、web3は全ての人にデータを所有する自由を与え、「非中央集権」の世界を実現しようとしている。そこで起きる社会変革とは何か。日本の成長戦略やビジネスにどう取り入れるべきか。活発な議論の全貌をレポートする。
プラットフォームが覇権を握る「中央集権」が終わる、web3の世界
「今年は、web3元年です」と、このカンファレンスに際して呼び掛けたのは、「THE NEW CONTEXT CONFERENCE 2022」でホストを務めるデジタルガレージ(以下、DG)取締役兼専務執行役員Chief Architectの伊藤 穰一氏だ。
伊藤氏は基調講演の冒頭で、古代メソポタミア文明の粘土板によって所有を示すアカウンティングが始まり大都市形成が可能になったこと、1400年ごろにイタリアのメディチ家がつくった複式簿記によって現在へ連なる資本主義、民主主義への適応能力ができたことを語った。この2つは社会変革をもたらした大きな技術だが、その次に位置するのがweb3であると伊藤氏は考えている。
インターネットがもたらしたWeb1.0では誰もが情報を閲覧できる“read(読む)”、Web2.0ではブログやSNSによって誰もが情報を発信できる“write(書く)”が実現した。そして、全ての取引が改ざん・変更されることなく記録され、誰もが全ての取引を確認できるブロックチェーンを基盤としたweb3がもたらすのは“join(参加する)”であると、伊藤氏は語る。
「web3はよく“ownership(所有すること)”と定義されます。しかし、私がこれを“join”とするのは、web3が新たな組織論をつくり、コラボレーションするための根っこになるからです。ブロックチェーン上のトークンは、持ち物であると同時に権利なのです。トークンを持っていることで配当を受けたり、投票したり、決済に参加したりすることができるのです」(伊藤氏)
トークンはブロックチェーン上の資産の総称だ。ビットコインなど暗号資産に代表される代替可能なトークンのほかに、NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)という唯一無二の価値を持つトークンがある。NFT市場は、ゲームや不動産、アートなどの分野から盛り上がり始めているが、このNFTを誰の持ち物かが分かる状態で、パブリックブロックチェーンを通してどこでもオープンに使えるようになるのが「オープンメタバース」であり、web3の世界だ。
もう1つ、Web3の重要な概念がDAO(Decentralized Autonomous Organization:自律分散型組織)だ。共通の目的を持つ集まりであり、独自のガバナンストークンを発行し、それを持つものが意思決定の投票に参加したり、配当を受け取ったりできる。DAOが株式会社と大きく違うのは、トークンの大半が利用者に割り当てられること、そして非常に簡単につくれることだ。