web3時代の社会システムの在り方と日本の可能性

 セッション3の「web3時代の社会システム」では、既存の仕組みを“破壊”するのではなく、“進化”させるための取り組みやそのエコシステムの形が論じられた。

 暗号資産による分散型金融プロジェクトCEGA共同創業者 兼 CEOの豊崎亜理紗氏は、DeFi(Decentralized Finance:分散型金融)を「世界の全ての人に開かれたブロックチェーン上の金融サービスの総称」と定義付け、伝統的金融のオペレーションコストの高さという欠点を補填し、金融インフラの整わない国でも自由な資産運用ができ、しかもDAOを通して誰もが声を上げられるガバナンスが可能になると語った。

 一方で、セキュリティーの課題についても論じられた。暗号資産がハッキングにより流出する事件は過去に何度も起きており、日本でブロックチェーンへの投資や興味が委縮する原因にもなった。米スタートアップwebacy共同創業者 兼 CEOの五十川舞香氏は「web3ではブロックチェーンという新しい技術を見つけて、セキュリティーのステップを忘れてしまったという側面がある」と指摘した。

 また、暗号通貨イーサリアムにおいて契約を自動実行する「スマートコントラクト」の脆弱性をチェックする監査プロトコルQuantstampのAPACリージョナルマネージャーである小田啓氏は「今年だけで15億ドルがハッキングによって流出した」という事実に触れ、コミュニティーを守るためにセキュリティーは必須であり、自主的に監査を受けられる体制をつくっておくことの重要性と、技術的にはそれが可能であることを語った。

 最後のセッション4「web3立国になるための日本の成長戦略」では、日本がweb3の波に乗り、成長するための可能性と戦略について、技術、文化、ビジネス、そして政治とさまざまな側面から論じられた。

ポルトガルのリスボンに拠点を置く、大日方裕介氏

 ブロックチェーンプロジェクトPolkadotを主導したWeb3 Foundationおよび Next Web CapitalのCryptoAgeファウンダー、大日方祐介氏は「2017から2018年にかけて日本がweb3の世界の中心になりかけていた」として、その後、失速してしまったが、再び日本中心に返り咲くチャンスはあると語った。Web2.0まではシリコンバレーが中心にあったが、web3では規制や税制の変化に応じて、技術者がスイスやドバイ、リスボンなどの国家や都市に移るからだという。さらにはweb3を担っていくのは若者たちであり、彼らを引き付ける魅力ある街として、東京には十分な可能性があるとした。

 最後の講演に登壇した、自民党デジタル社会推進本部長である平井卓也衆議院議員は、岸田内閣の「新しい資本主義」にweb3の推進が盛り込まれていることに触れ、「実物経済からデジタルな資産へと、経済がシフトするのは避けられないことであり、国家の成長戦略として新しい価値のデジタル化に取り組んでいる」とした。

 会計基準、税制、デジタル資産の安全性の問題、そして日本の民法ではデジタルの所有権がないことなど「心配ごと」は整理して解決していく必要はある。しかし、平井氏は「日本人は元来、河川の管理などを通して、互いにリスペクトしながら、自律分散型で利益を享受してきた」と日本人とweb3の親和性に言及し、「日本は光ファイバー、4G、5Gなどの通信インフラが整っており、成熟した市場もある。さまざまな起業家に日本をweb3の実験場のように使ってビジネスを展開してもらえる」と日本の可能性を語った。

 web3の世界で今起きていることと、これから起こること。それによって、われわれの住む世界が、どう変わっていくのか。まさに未来を見るカンファレンスだった。