DXを推進する国内企業が増加し、多くの企業がDXを全社的な課題と位置付けて体制整備を進めているが、成果を獲得する例は一部にとどまっている。

 DXプロジェクトの成功確度を高めるためには、その成功要因を的確に把握した上で、DX推進における戦略施策を立案・遂行することが大事だが、それが十分ではないのが原因だ。

 DXの成功要因についてはさまざまな見方があるが、今回はDX推進企業への調査で得られた4つの重要な成功要因について紹介しよう。

重要な4要素は2020年も2022年も変わらず

 ITRでは、DX推進企業を対象に2020年(N=486)と2022年(N=772)に調査を行い、DXプロジェクトの成功要因と考える要素について回答を得た(最大3つまで。下の図)。

出典:ITR『デジタルビジネス動向調査』(2020年8月)、『デジタル&メタバース利用動向調査』(2022年8月調査)
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 2020年においては「経営者層のコミットメント」「企業レベルでの組織変革(チェンジマネジメント)」「推進リーダー/チームの権限の確保」「IT/デジタル分野の技術者の参画」の4つが30%以上の回答率を得ており、重要な成功要因と見られていることが分かる。

 これらが2022年にどうなったかだが、「企業レベルでの組織変革(チェンジマネジメント)」が首位に、次いで「推進リーダー/チームの権限の確保」が2位に浮上したが、この4要素がいずれも重要要素であることには変わりはなかった。

企業変革には「経営者層のコミットメント」が欠かせない

 まず、「経営者層のコミットメント」である。

 同項目は、2020年の45%から2022年は41%へと選択率はやや低下したが大きな差はなく、引き続き最も重視すべき成功要因の一つと見て差し支えない。

 DXはトランスフォーメーション(転換・変革)という言葉が表すように、企業変革を意味する。

 これにはトップダウン、ボトムアップ、ミドルアウトなどさまざまなアプローチがあるが、いずれの場合も、最終的にはトップマネジメントをはじめとする経営者層が、DXを経営課題に位置付け、経営戦略に組み込む必要があることに変わりはない。

 また、ステークホルダー資本主義の今日においては、企業としてのDXのビジョンや戦略を確立し、経営者層のコミットメントを社内外へ広報・訴求することも重要である。

 コーポレートステートメントや統合報告書に十分な記述がなければ、経営戦略としてDXを推進しているとは言い難い。また、経済産業省が定める「DX認定」を目指す企業においては、これらの点が重要な評価要素の一つとなることも見落としてはならない。