2029年に創業100周年を迎える化粧品メーカー、ポーラ・オルビスホールディグス。同社が今目指しているのはウェルビーイング経営だ。新たな価値創造を可能にする土壌育成にはウェルビーイング経営こそが役立つとの考えに基づき、「感受性のスイッチを全開にする」をグループ理念に掲げている。ウェルビーイング経営とこの理念はどうつながるのか。同社の大ヒット商品「リンクルショット メディカル セラム」を開発したリーダー、末延則子氏に聞いた。
自分たちもお客さまもワクワクすることが、ポーラ・オルビスが目指すウェルビーイング経営
――ポーラ・オルビスホールディングスは2017年にグループ理念を刷新し「感受性のスイッチを全開にする」を掲げました。この理念はどのような意味でしょうか。
末延則子氏(以下敬称略) 「感受性のスイッチを全開にする」には「お客さまや社員を含め、世界中の方々が心豊かで彩りある人生を過ごせるように」との思いが込められています。
具体的には、化粧品だけではなく体験、情報、文化、アートといった領域でもポーラ・オルビス独自の価値を提供することで、人々の感受性を刺激して全開にし、人生を変えるほどの飛躍のきっかけにしてもらいたいと考えています。
同時に、われわれがポーラ・オルビス独自の価値を提供できるようになるには、「それを作り出す私たち自身が豊かな心で、日々好奇心を持つこと」、そして「おのおのの個性が最大限発揮されること」が大切だと考えています。
4000人の社員がいたら、そこには4000の個性があり、4000の飛躍のチャンスがあります。そして4000人の一人一人が独自の価値を提供できるはずです。これを企業成長のチャンス、企業進化の可能性にしていきたいと考えています。
――このミッションの先にウェルビーイング経営があるわけですね。
末延 ウェルビーイングは一般的に肉体的、精神的、社会的に満たされた状態といわれますが、私たちが新たな価値を提供して、お客さまにワクワクを感じていただくことがウェルビーイングだと考えています。そして、そのために私たち自身がワクワクすることもウェルビーイングだと思っています。つまり、自分たちもお客さまも、感受性のスイッチを全開にしてワクワクすることが、ポーラ・オルビスが目指すウェルビーイング経営なのです。
――ウェルビーイング経営のために、どのような活動をしていますか。
末延 ポーラ・オルビスは2029年の創業100周年に向けて、長期経営計画として「VISION 2029」を策定しました。そこで定めた目指す姿が「多様化する美の価値観に応える個性的な事業の集合体」です。現在の主軸である化粧品事業の領域で、もっと個人に深く、もっと価値ある化粧品を提供し、もっと社会やウェルビーイングによい効果を与えたいと考えています。
そのために3つの基本戦略に取り組んでいます。基本戦略1が「化粧品事業のグローバル展開とブランドポートフォリオの改革と拡充」。基本戦略2が「新価値の創出による事業領域の拡張」。基本戦略3が「研究・技術戦略の強化」です。
私はポーラ・オルビスのグループ研究・知財薬事センターの担当なので、この中の基本戦略3について、詳しく説明したいと思います。
「研究・技術戦略の強化」はウェルビーイング経営のために、お客さまや私たちが大きく飛躍できる、ワクワクできる製品やサービスを提供するための取り組みです。
われわれが大きく飛躍できる製品やサービスをつくるには、私たち個々人が持つ独自の価値や想いが重要だと考えています。私自身、自分が大きく飛躍できたと思える製品を15年かけて開発してきました。
それは日本初のシワ改善に役立つ医薬部外品です。これは「なぜシワはできるのか?」という疑問への答えを知りたいという想いからスタートしたものです。