バイタルデータを医師と共有、オムロンヘルスケアの遠隔医療サービス「Viso」
一方、オムロンヘルスケアは1973年に血圧計初号機を開発以来50年、「脳・心血管疾患の発症ゼロ」実現に向けて、家庭での血圧測定と心電図記録の普及に取り組んでいる日系のヘルスケア企業である。
米国では、心臓発作や脳梗塞の恐れがあるステージ2の高血圧患者であっても、適切な治療を受けていないケースが非常に多いとされている。CDC(アメリカ疾病予防管理センター)の発表によると、その数は成人でなんと3700万人以上という。現状を危惧した米国政府は2025年までに血圧コントロール率80%を目指す指針を出しているが、その達成のためには、より多くの人の高血圧治療の継続と参画が必要不可欠となっている。
オムロンヘルスケアはCESには2015年から連続して出展していて、コロナ禍でデジタル開催になったCES 2021のプレスカンファレンスにおいても、高血圧症向けの遠隔患者モニタリングシステム「Vital Sight」を紹介して注目を集めた。
(参考動画)Welcome to the VitalSight Remote Patient Monitoring Program
健康管理アプリ「OMRON connect(米国・欧州版)」はその一連の取り組みの1つで、通信機能付きの血圧計や体重計などから送られたバイタルデータをAIで分析、より良い健康管理のための、個人向けアドバイスを提供している。
また、CES2023のプレスカンファレンスにおいて世界で初めて公開された「Viso」は、高血圧症などの慢性疾患を抱える患者が家庭で測定した複数のバイタルデータを医師と共有できる遠隔医療サービス。加えて、専門医監修による患者の状態確認プログラムにより、体調や服薬状況をタイムリーに確認できる機能も備えている。英国でオックスフォード大学と連携して新たにサービスを開始するという。
ところで米国でも、在宅で医療サービスが受けられる遠隔診療の普及率は、コロナ直前まで1%程度で、日本と同等だった。これが、パンデミック発生により、診療報酬が見直され、公的保険が遠隔診療に保険を付けたことから、急速に拡大することになった。現在では診療の6割から7割が遠隔診療メインで、もう元には戻らないと言われているという。
CES 2023では「アメリカのヘルスケアの未来:新たなハイブリッドモデル」と題する基調講演がアメリカの医療制度に影響力を持つ5名の医療専門家によるパネルディスカッション形式で開催された。遠隔診療の拡大のために医療提供者がアクセスできる医療データの統合や医療データネットワークの整備が主要議題になったことから推察されるように、オムロンヘルスケアが取り組む「Vital Sight」や「Viso」は社会貢献の点でも非常に意義深いものだ。