2030年に向けたビジョンは「協和キリンは、イノベーションへの情熱と多様な個性が輝くチームの力で、日本発のグローバル・スペシャリティファーマとして病気と向き合う人々に笑顔をもたらすLife-changingな価値の継続的な創出を実現します。」。この中にある「Life-changing」は同社の新薬についての臨床試験参加者との会話の中から生まれた。
バイオテクノロジーと抗体医療を強みとして、日本発のグローバル・スペシャリティファーマに挑む協和キリン。経営理念は「協和キリングループは、ライフサイエンスとテクノロジーの進歩を追求し、新しい価値の創造により、世界の人々の健康と豊かさに貢献します。」だ。会社設立当初からあるこの経営理念について、代表取締役社長CEOの宮本昌志氏はこう語る。
「経営理念やビジョンを従業員に説明する際には、伝わりやすいように山登りのメタファーを用いる。経営理念は企業が存在している理由で、登山で言えば『なぜ山に登るのか』。なぜそうするかの理由、言い換えれば、従業員が協和キリンで働く理由が経営理念だと考えている」
ここでの「新しい価値」は、自分たちの価値ではなく、患者やその家族、医療従事者など顧客の価値を指している。病気と向き合う患者のQOL(Quality of Life)向上や笑顔のために、自分たちは仕事をするのだと定義している。
2030年に向けたビジョンは「協和キリンは、イノベーションへの情熱と多様な個性が輝くチームの力で、日本発のグローバル・スペシャリティファーマとして病気と向き合う人々に笑顔をもたらすLife-changingな価値の継続的な創出を実現します。」となっている。
「ビジョンは、登山で言えば『どの山頂を目指すのか』。ビジョン達成にどれくらい時間がかかりそうなのか、ゴールまでどのくらい距離があるのか、こうしたら登れるのではなど、具体的な道筋が見えることが大切。同時に組織や個人のビジョンもそれぞれ設定してもらい、全社一丸となって同じ目標に向かう体制を整えている」
ビジョンでは、具体的にどんなことを成し遂げたいかを共有する。「to do」と「to be」はセットで考え、数字などの具体的な目標に加えて、チームの在り方やなりたい自分像も考える。「こんな会社になる」ために、「どういった組織を望むか、どんなチームで成し遂げたいのか、自分はどんな人間になりたいのか」という視点を大切にする。
価値観は「Commitment to Life(コミットメント・トゥ・ライフ)この地球上で最も大切な存在のために働こう。患者さん、患者さんを介護する人、医療従事者、そしてお客様のために価値を創造しよう。」を中心に、「Integrity(インテグリティ)」「Innovation(イノベーション)」「Teamwork/Wa(チームワーク/和・輪)」の3つのキーワードで構成される。山登りの例では登山時の態度を指し、手段を問わないのではなく、マナーをしっかり守ろうとの意思を表す。
こうした経営理念体系が、社内に根付くような工夫も行う。例えば、2021年より始まった「Commitment to Life Award Ceremony」では、Life-changingな価値を創出したチームを表彰することで、従業員がより深く経営理念を理解する機会を増やす。