宇都宮工場の外観

 中外製薬は、リウマチの治療薬として知られ、7例目のコロナ治療薬としても日本政府に承認されている「アクテムラ」などを製造しているが、6月3日にバイオ医薬品の生産拠点である宇都宮工場のバーチャル工場見学会を行った(今回の工場見学会はコロナ禍ということでリアルではなくバーチャルで実施された)。この工場、内部はどのようになっており、どのようにバイオ医薬品を生産しているのだろうか?

日本最大級のバイオ医薬品製造工場

 殺虫剤の「バルサン」やドリンク剤の「グロモント」などを製造していたことでも知られる中外製薬。これらは既に譲渡され、今は医療用医薬品に特化している。現在、医薬品の製造は100%子会社の中外製薬工業が担っており、バイオ医薬品の製造拠点である宇都宮工場は1990年に操業を開始している。

 この工場、敷地面積は12万2000平方メートル、1万リットルのタンクを8基所有し、注射剤の製造やバイオ原薬の培養から出荷まで行う国内最大級のバイオ医薬品製造拠点だ。世界110カ国で承認され、日本政府もコロナ治療薬として承認した抗体医薬品の「アクテムラ」の生産もここで行っている。まさに中外製薬の中核をなす工場といっていいだろう。

 宇都宮工場は「注射剤」「品質管理」「倉庫・エネルギー」「バイオ原薬」など幾つものビルに分かれており、今回の見学会では注射剤を製造する「注射剤」のビル棟とバイオ原薬を製造する「バイオ原薬」のビルを見学することになっている。

 このバーチャル見学会を実施した理由について、同社の田熊晋也執行役員 製薬本部長兼中外製薬工業社長は「新型コロナ禍で薬製造の安定供給が大きなトピックとなり、メディアのみならず一般の人からも多くの質問が寄せられた。医薬品製造とはどういうものなのかを理解してもらうきっかけとなってほしい」と語る。

田熊晋也執行役員製薬本部長兼中外製薬工業社長

 バイオ医薬品とは、遺伝子組み換え技術やバイオテクノロジーを使って製造された医薬品のこと。経済産業省の産業構造審議会にある商務流通情報分科会バイオ小委員会が2021年2月に出した、バイオテクノロジーが拓く『第五次産業革命』によると、2020年のバイオ医薬品の全世界での売り上げは9400億ドルで、うちバイオ医薬品は2840億ドルと全体の約30%を占めるが、2026年になると売り上げは1兆4320億ドルにまで増加し、そのうちバイオ医薬品は5050億ドルと35.3%にまで売上構成比が増えると予想。2019年から2026年までの年平均成長率は9.6%と高成長が見込まれている。