帝人は、2018年に100周年を迎えた。そして、次の100年に向けて、長期ビジョンである「未来の社会を支える会社」を目指すためにスタートしたのが、山名慶氏率いるNOMON(ノモン)である。

 NOMONが取り組むのは「老化」。帝人のヘルスケア新事業CTOでもある山名氏は、長年の医薬品研究経験を生かし、社内起業家としてNOMONを立ち上げ、新たな道を切り開いた。NOMON設立までの困難や、それを乗り越えたプロセスについて聞いた。

※本稿は、Japan Innovation Review主催の「第2回 新規事業フォーラム」における「特別講演:企業内起業を果たした帝人・山名慶氏の“壁の乗り越え方”/山名慶氏」(2024年6月に配信)をもとに制作しています。

生物研究の進化とともに注目を集める「老化」対策ビジネス

 NOMONが専門領域とするのは「老化」への対策だ。実はロブスターや亀、クラゲなど、脱皮する際、殻だけでなく内臓も一新することで、「老化を制御する」生物は多数存在し、生物の老化の要因が最近の研究によって解明されつつあるという。そして、研究を人間に応用することで、老化をコントロールし、若返りができるのではないかと期待が寄せられている。

 それをビジネスチャンスとして、この1~2年でAmazonのジェフ・ベゾスやOpenAIのサム・アルトマンなどのビリオネア(10億ドル以上の資産を持つ人々)が老化対策のビジネスに投資をしている状況である。

 以下では、NOMON 代表取締役CEOの山名氏の講演から一部抜粋、再構成して、研究者から事業家への転身、異業種への挑戦、新会社設立における内部説得の難しさなどをお伝えする。