患者は理学療法士と作業療法士が作成したリハビリメニューについてリブレスモバイルアプリを通じて実行できる。同時に、理学療法士と作業療法士の側でも全ての患者データをリブレスクリニックアプリで表示・確認できるので、患者ごとのリハビリ実行と進行状況をシームレスにリモート監視できる。

 何より、リハビリの進捗をわかりやすい形で可視化できることは、療法士と患者双方の信頼とモチベーションを高める上で効果を発揮するという。

H・ロボティクス(H・ROBOTICS)のリブレス(rebless)は、患者がロボット治療装置とアプリを使い、自宅で継続的かつ段階的なリハビリテーションを可能にするシステムだ(筆者撮影)

 また、ウィル(WHILL)社の次世代の自動運転車椅子も興味深かった。下の写真はプレス対象のメディアデーの夜、「CES Unveiled」というイベント会場を自律走行する自動運転車椅子である。

プレス向けイベント「CES Unveiled」の会場を自律走行するウィル(WHILL)社の次世代の自動運転車椅子(筆者撮影)

 ウィル社の自動運転車椅子は、現在は空港など公共施設内の移動に利用されているケースが多いようだが(羽田国際空港でも実証実験が進んでいる)、大きな病院で長期の入院患者を検査や入浴、ちょっとした買い物などの用途にも十分応用可能であることは想像に難くない。空港での実証実験でも自動運転車椅子の導入が、コスト削減、スタッフの削減に繋がることが証明されており、医療従事者の負担を軽減するという意味合いでも、病院をはじめとした医療機関での導入が真剣に検討されるべきであろう。

社会課題解決のキーワードは「共感」

 今回はCES 2023レポートの「番外編」として、ヘルスケア領域でのイノベーションを見てきた。

 最後に一言。MEMSセンサー、AI、IoTクラウド、ロボティクス、GPSといった最先端テクノロジーももちろん重要だが、それらはあくまでも手段に過ぎない。

 冒頭で紹介したアボットのミッション・ステートメントように、お客さま(患者)への「共感」(Empathy:エンパシー)が研究開発を進める企業の考え方や姿勢の中心にあるべきことを肝に銘じなければならない。

 ここ数年、気候変動やコロナ禍、ウクライナ戦争などで「人間の安全保障」を脅かす多くの課題が顕在化している。企業の事業成長と、地球環境の保全、多様性や差別解消など社会課題の解決を同時実現していかなければ持続可能な未来がやってこないことは、多くの日本人は身に染みてわかっているはずである。解決のキーワードは「共感」に他ならない。