郵政事業の創業から150年以上の歴史を持ち、全国約2万4000の郵便局ネットワークを持つ日本郵政グループ。2021年5月に中期経営計画「JP ビジョン2025」を発表、リアルの郵便局ネットワークとデジタルを融合して顧客体験価値を徹底的に高める「みらいの郵便局」構想を掲げた。その実現に向けた取り組みについて、JPデジタル 代表取締役CEO、日本郵政 執行役・グループCDO、日本郵便 執行役員を務める飯田恭久氏が解説する。

※本コンテンツは、2022年12月1日に開催されたJBpress/JDIR主催「第15回 DXフォーラム」の特別講演1「日本郵政グループが目指すDX~デジタル×リアルの融合『みらいの郵便局』の実現を目指して~」の内容を採録したものです。

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デジタルとリアルの融合による価値創造で実現する「みらいの郵便局」構想

 日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の3つの事業会社と、ホールディングスである日本郵政から構成される日本郵政グループ。創業から150年以上の歴史を持ち、全国約2万4000の郵便局ネットワークと約40万人以上の従業員を擁する同グループは、郵便、貯金、保険の3事業を中心に、利用者と地域に寄り添い、暮らしを支える商品やサービスを提供している。

 日本郵政グループは、2021年5月に中期経営計画ビジョン「JP ビジョン2025」を策定。リアルの郵便局ネットワークとデジタルを融合して、「既存のコアビジネスの強化と新規ビジネスの創出を行うことで、お客さまと地域を支える『共創プラットフォーム』を実現していく」というビジョンを掲げた。

 このような背景により、DXの推進が重要なテーマになっている日本郵政グループでは、2021年7月にグループの子会社となるJPデジタルを設立。同社は主にグループ横断的なDX施策の実行、各事業会社のDX施策の支援、デジタル技術を活用した新規サービスの構築、DX人材の育成の4つの役割を担い、グループのDX推進を支援する。

 では、リアルとデジタルをどのように融合させ、DXを推進、郵便局を進化させていくか。日本郵政執行役・グループCDOであるとともに、日本郵便執行役員、JPデジタル代表取締役CEOでもある飯田恭久氏は、「みらいの郵便局」構想の実現について解説する。

デジタル技術と「人の温かみを感じるサービス」を生かして顧客に寄り添う

 飯田氏は「JP ビジョン2025」で掲げた「みらいの郵便局」の実現について、「デジタルを使って郵便局が今本当に成し遂げるべきことは何か。その答えはシンプルで、郵便局のサービスをご利用になるお客さまの体験価値を徹底的に高めることです」と話す。

 日本郵政グループの資産は、全国にある郵便局のネットワークと、そこで働く従業員が提供する郵便局ならではの「人の温かみを感じるサービス」だという。しかし、現状の郵便局は用事があるときだけ手続きをしに行く場になっており、郵便局と利用者のつながりは「点」になってしまっている。そこで、デジタル技術を活用することで今以上に利用者の生活や人生に接点を持ち、「面」としてつながれる存在を目指す考えだ。

 例えば、現在マニュアルや紙を用いている手続きをデジタル化し、いま抱えている不便さや不満といったマイナスの要素を解消する。そして、本来注力すべき人生や生活の相談といったプラスの体験、新しい期待をつくり出すことを目指している。

「デジタル技術を活用すれば、郵便局はお客さまの生活や人生に寄り添うことができるのではないかと思っています。お客さまにより多くの価値あるサービスを提供していきたいと考えています」