正解の見えない中で変化が求められている昨今の企業経営環境では、生存するために組織の創造力を高めていく必要がある。創造性を促すクリエーティブリーダーシップについて、デザインコンサルティング会社であるIDEO Tokyoのマネジング・ディレクター兼共同代表の野々村健一氏は、「『集合知』から『集合創造力』へと押し上げる力」と話す。同氏が、DXのようなテーマが加わった際にどのようなリーダーシップを発揮して推し進めていくべきか解説する。

※本コンテンツは、2022年11月30日(水)に開催されたJBpress/JDIR主催「第15回 DXフォーラム」の特別講演2「DX時代に求められる創造的リーダーシップ」の内容を採録したものです。

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未来をつくることこそが最良の予測につながる

 1978年に米国でデザインコンサルティング会社として創業したIDEO(アイディオ)は、Apple(アップル)の最初のマウスをデザインするなど、工業デザインから始まった。その後デザインの領域は広がっていき、現在は、「デザインを通じて世の中にインパクトをつくる」ことを事業とし、学校のデザインや組織変革にも取り組んでいる。2011年に誕生した日本支社のIDEO Tokyoでは、デザインとクリエーティビティを通じて日本の変化に貢献することをミッションとしており、「デザインコンサルティング」「ベンチャーキャピタル」「ラーニングプログラム」を事業の柱とし、さまざまな企業と協業し新しいものづくりを展開している。

「最近、グローバル企業の経営者層やマネジャー層との間で、クリエーティブリーダーシップやデジタルトランスフォーメーション(DX)がテーマになることが増えています」と話すのは、IDEO Tokyoでマネジング・ディレクター兼共同代表を務める野々村健一氏だ。

 背景には、近年の新型コロナウイルス感染症の流行やウクライナ情勢に象徴されるように、世の中の不確実性や変化の速度が高まっている現状がある。歴史的な観点で見ても、現代は「Society5.0(ソサエティ5.0)」への転換の渦中にあるといわれており、多くの企業や組織が消滅する一方で、新しい技術やイノベーションが社会に定着するタイミングであるという。

 このような変化の中では、変化への適応が求められるものの、過去の出来事から未来を予測することは不可能に等しい。この問題に対し、野々村氏は「未来を予測する最良の方法は、未来をつくることです」と、「創造すること」の重要性を説いた。