槁本 図の「Driving Entrepreneurship」が今回のワークショップにつながります。いわゆるアントレプレナーシップをどう生んでいくかというところです。今や、完全に新しいものをゼロイチで生み出していける分野はそうありません。社内の既存のアセットや社内の良いところ、社外の良いところを組み合わせて新しいものを作っていく、新しく見せていくことが必要なのです。そのためのアントレプレナーシップを育てるというところで、このワークショップをしています。

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 飯室氏のワークショップでは「行動」と「適応」、外へ働きかけて何か(誰か)に影響を与える(行動)と、内へ働きかけて自分の意識や価値観に変化を起こす(適応)の双方が重要だとされる。

 アデコで行われているワークショップでも、この2つを同時に行い、10日間のワークショップでインプットとアウトプットを同時に実行する。学ぶだけではなく、それをどうやって武器として生かすかまでをカバーしている。

 また、アデコではワークショップの対象をあえてミドル層や、入社間もない人も含めた、もう少し下の層まで広げている。こうしたワークショップや研修というと、多くの企業では通常はマネジメント層(中間管理職や上位マネジメント層)に向けて導入されることが多いが、アデコではそこをずらしている。

 というのは、マネジメント層はどうしても日々の数字に追われ、ワークショップを受けたからといって習慣を変えることが難しいから。それなら、まだ習慣が付いていない人たちから変えていこうということだ。同時に、これはマネジメントではない層に経営やマーケティングに、早いうちから意識を向けてもらうことにもつながる。

生き生き働く社員のワクワクが社会に波及していく

 アデコでは、こうして社内の改革が実現できたら、次はそれを社会の変革へと広げていく。アデコが目指す社会は次のようなものだ。

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西村 こうしたワークショップ、取り組みを含めていった当社は、きっとどの会社よりも、生き生きと働く社員であふれているはずです。生きること、働くことに一生懸命でワクワクしている。そんな社員が社会と接点を持つことで、仕事を探している人にもそれは波及していくだろうし、一緒に話をするクライアントの役員、人事の皆さんにも波及していくと考えています。ということは、その企業で働いている何十人、何百人、何万人という皆さんにも波及していく。そうしたエネルギーを社会に伝えられる組織になっていたいと思います。

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「今の仕事が合わなくてつらいなと思う人がアデコのエコシステムにジョインしたら、自分で自分の仕事を生み出していけるというような、一歩ずつですが、そうした形になるよう進めていきたいと考えています」と槁本さん

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槁本 イノベーション、「両利き経営」の片側をアデコが動かしていくことを目指しています。このワークショップのメインの部分でもあるのですが、自分一人で何かを作るのではなくて、アデコがエコシステムの1つを担う部分になる。例えば、今の仕事が合わなくてつらいなと思う人がアデコのエコシステムにジョインしたら、自分で自分の仕事を生み出していけるというような、一歩ずつですが、そうした形になるよう進めていきたいと考えています。

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 人材サービス会社というと、人とポジションをマッチングさせて職を生み出せばそれで終わりというイメージがあるが、社会をどう変えていくかという視点で在り方を捉え直すと、まだまだ「やれること」があり、見落とされていたことは多かった。

 それに気が付き、人材サービス会社として社会に貢献する新たな役割を「人財躍動化」に定めたアデコの事例は、多くの日本企業が悩んでいる「人材の活性化」や「自走式の組織づくり」などにヒントを与えてくれるはずだ。