大和ハウス工業 上席執行役員 技術統括本部副本部長 住宅安全担当 環境担当 河野宏氏

建設現場のDXは、ビジネス変革の土台

 大和ハウス工業が2022年5月に策定した第7次中期経営計画(2022年4月~2027年3月の5カ年計画)では、「収益モデルの進化」「経営効率の向上」「経営基盤の強化」の3つの経営方針を掲げ、その実現に向けた8つの施策を発表した。その施策の一つであり、全ての取り組みの基盤として強調されているのが、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進だ。

 同社にとってのDXは、経営基盤の強化と働き方改革を担う「守りのDX」と、収益モデルの進化、ビジネスモデル変革のための「攻めのDX」に役割が分かれている。新中期経営計画の重点施策となっているのは「攻めのDX」の方だが、その実現には「守りのDX」がしっかり機能しなければいけないのは、言うまでもない。

 とりわけ、建設業界を取り巻く人手不足、労働環境の改善は、避けて通れない課題である。同社 上席執行役員 技術統括本部副本部長 住宅安全担当 環境担当の河野宏氏に、同社におけるDXと働き方改革の取り組みを聞いた。

――建設業が直面する課題は種々あると思いますが、現場では何が起きているのでしょうか。

河野 労働者不足の問題は、建設業の現場ではまだそれほど顕在化はしていません。直近でもオリンピックの需要など、一時的に人手不足が課題になったことがありましたが、今はそれが一巡して、落ち着きをみせているところです。

 しかし、これから5年後、10年後を考えると、労働者不足はもっと厳しい状況になります。これは確実です。若者の人口は減る一方で、高齢者の働き手は次々と引退していきます。問題が大きくなってから対処しようとしても手遅れになります。

 だからこそ、余裕がある今のうちに手を打たなければいけないと考えています。既に特定の地方や職種によっては、労働者が不足しているという声も上がっています。やるのは今、です。