上海の危機的状況を受け、中国政府のゼロコロナ政策をこれまで以上に順守する都市が増えている。香港の調査会社ギャブカル・ドラゴノミクスによると、22年4月中旬時点で中国の半数以上がコロナ制限の影響を受けている。それに伴うサプライチェーン(供給網)の混乱によって同国の堅調な輸出産業にリスクがさらに重くのしかかるとウォール・ストリート・ジャーナルは報じている。
英調査会社オックスフォード・エコノミクスの中国担当エコノミスト、トミー・ウー氏は「中国政府は、パンデミック対策を何よりも優先しているようで、地方政府は当面感染抑制に注力し、経済に関する懸念は後回しにするだろう」と指摘している。
ウー氏は「中国の厳しいコロナ規制は上海市のほか、広東省広州市などの他の主要商工業都市にも広がっており、その影響が経済全体に波及し始めた。22年4~6月の成長率は前期比マイナスになる可能性がある」とも指摘している。
4月は輸出の伸びゼロの可能性
米アップルからスマートフォン「iPhone」の組み立てを請け負っている台湾・和碩聯合科技(ペガトロン)は22年4月12日、上海市と江蘇省昆山市の工場で操業を一時停止したと明らかにした。
ノートパソコンの生産を主力とする台湾の電子機器受託製造サービス(EMS)仁宝電脳工業(コンパル)は米デル・テクノロジーズや中国レノボ・グループの製品を昆山工場で生産している。アナリストらはコンパルもロックダウンの影響を大きく受ける可能性があると指摘している。
米電気自動車(EV)大手のテスラは上海に工場を持つが、ウォール・ストリート・ジャーナルによると、同社は部品不足を理由に生産を一時停止した。
中国のゼロコロナ政策に基づく厳格なロックダウンは、労働市場や小売り、電子機器、自動車、輸出などあらゆる分野に打撃を与えていると指摘されている。
野村ホールディングスのエコノミストは、「原材料や資金、労働力が中国の工場に行き渡らずサプライチェーン問題が深刻化する中、22年4月は約2年ぶりに輸出がまったく伸びない可能性がある」と分析している。中国の22年3月の輸出は前年同月比15%増だった。
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