台北にある鴻海オフィスビル(写真:ロイター/アフロ)

 米アップルのスマホ「iPhone」の生産の大半を手がける台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業の業績が先行き不透明な状況だと、米ウォール・ストリート・ジャーナルロイター通信などが3月16日に報じた。

ウクライナ侵攻で生じるインフレが供給網に影響

 同日の決算発表で鴻海は、長期にわたるパンデミックや地政学的事象、インフレがサプライチェーン(供給網)に影響をもたらすとし、今後の経営環境はいっそう厳しいものになると説明した。

 鴻海の劉揚偉・董事長(会長に相当)は「さまざまな不安定要因がある中、グローバルサプライチェーンがどこに向かっているのかという観点からみると、より明確な状況が明らかになるまでに数カ月かかるだろう」と述べた。

 「ロシア軍によるウクライナ侵攻の影響は鴻海にとって限定的であるものの、それから生じるインフレはコストを押し上げ、世界のサプライチェーンに打撃を与えるおそれがある」と指摘した。

 ウォール・ストリート・ジャーナルによると、パンデミックが生産停滞や半導体などの重要部品の品不足を引き起こす中、企業は原材料価格の高騰やサプライチェーン混乱といった問題に苦しんでいる。こうした中、ロシアのウクライナ侵攻によって、石油と商品の価格が急騰しており、問題が悪化しているという。

 鴻海が同日発表した2021年10〜12月期決算は、売上高が前年同期比5.9%減の1兆8898億台湾ドル(約7兆8900億円)、純利益が同3.4%減の444億台湾ドル(約1850億円)だった。減収は5四半期ぶり、減益は4四半期ぶりだ。

 また、22年通期の売上高が最大3%減少するとの見通しを明らかにした。半導体不足でスマホの生産が抑制されるほか、コロナ禍で急増した需要が冷え込むと予想している。劉氏は電話会見で、「サプライチェーンの不透明感は今年前半いっぱいは続くだろう」と述べた。