アマゾン・ウェブ・サービス ロゴ イメージ(写真:ロイター/アフロ)

 米アマゾン・ドット・コムは3月8日、ロシアとベラルーシの顧客に対する小売製品の出荷を一時停止したと明らかにした。また両国におけるクラウドサービス「アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)」の新規契約や、外部販売業者による出品の受け付けも停止した。動画配信サービス「Prime Video(プライムビデオ)」はロシアからのアクセスを一時停止する。同社がロシアで直販する唯一のビデオゲーム「New World」の注文受付も中止する。

副首相、アップルやMSなど米欧IT大手に要請

 同社は声明で「ロシアとウクライナで現在進行中の状況を考慮して、この地域で追加の措置を講じた」と説明した。アマゾンによると、同社とクラウドコンピューティング部門のAWSは、ロシアにデータセンターなどのIT(情報技術)インフラやオフィスを持っていない。また主要顧客はロシア国内に開発拠点を置く外国企業。同社には、ロシア政府と取引を行わないという長年の方針があると説明している。

 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が続くなか、ウクライナのフョードロフ副首相兼デジタル転換相は北米や欧州のIT企業にロシア事業の停止を要請してきた。その対象企業は50社以上に上るとみられている。

 米アップルは2022年3月1日にロシアでスマホ「iPhone」を含む全製品の販売を停止した。米マイクロソフト(MS)は3月4日、公式ブログへの投稿を通じ、ロシアで全製品・サービスの新規販売を一時停止すると明らかにした。

 ロイター通信 によると、米ソフトウエア大手オラクルは3月2日、ロシア国内の全事業を停止したと発表。同業の独SAPもロシア国内で販売を停止すると明らかにした。このほか、米IBMや米ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)、米デル・テクノロジーズもロシア国内での販売を停止すると明らかにしている。

ウクライナの狙いはロシア国内のITインフラ遮断

 ウクライナの狙いは、ロシア国内のITインフラを遮断することにある。政治専門サイトのポリティコによるとウクライナのフョードロフ副首相は3月6日、アマゾンの創業者で会長のジェフ・ベゾス氏に書簡を送り、ロシアの全顧客に対してクラウドサービスの提供を停止するよう要請した。

 同氏はベゾス氏宛の書簡で、「ロシアを遮断しなければ、そのデジタルインフラによってもたらされる虐殺と偽情報を支援することになる」と述べた(フョードロフ副首相のツイッターへの投稿)。