デジタル社会の実現に向けて公共セクターのDXは必須だ。各自治体がさまざまなコンセプトでDXに取り組む中、仙台市は東日本大震災の経験と教訓を活かし、防災や環境配慮の観点も含めたデジタル化への取組みを進めている。人口減少・少子高齢化による将来の人手不足が想定される中、いかにして市民サービスの質を維持・向上させていくのか。郡和子市長が同市のDXの現在地を解説する。

※本コンテンツは、2022年2月17日に開催されたJBpress主催「第3回 公共DXフォーラム」の特別講演Ⅰ「仙台市のDXへの取組み~デジタルでもっとワクワクする“新たな杜の都”へ~」の内容を採録したものです。

人命第一で防災環境都市づくりに取り組む

 2011年3月11日に発生した東日本大震災。巨大津波によって多くの犠牲者を出した大災害は、多くの人の防災意識を根本から変えた。郡氏が市長を務める仙台市も、大きな被害に見舞われた。

「私たちは震災を通じて、自然の脅威を体感し、自然は制御することができないことを学びました。災害は起こるものとして、人命を第一に、被害を最小限にする『減災』の視点を取り入れ、自然の力も活かしながら都市の持続性を高め、快適で安全な都市の実現を目指してきました。これが『防災環境都市づくり』の取組みです。」

 仙台市では取組みの一例として、津波の流入を完全に防ぐのではなく、一定程度の津波の流入を想定しつつ、海岸堤防やかさ上げ道路などの様々な構造物を組み合わせた「盾」を築くことで、津波の勢いを減らし、市民の人命と都市機能を守る仕組みづくりを進めている。また、防災環境都市づくりを支える人材の育成という視点で、防災・減災に取り組む「ひとづくり」も進めており、この分野で活躍する市民や地元企業の取組みを世界に発信し、災害リスクの軽減に貢献したいと考えている。

 2021年度からはコロナ禍も踏まえた、新たな仙台市基本計画をスタートさせた。「まちづくりの理念は、『挑戦を続ける新たな杜の都へ~“The Greenest City”SENDAI~』です。さまざまな課題が複雑化し、生活様式も急速に変化する難しい時代です。国連の防災指針となる『仙台防災枠組』にその名を冠する本市においては、震災の経験に基づき培ってきた防災・減災の取組みも強みとしながら、コロナ禍などを契機としたさまざまな変化に対応するため、幅広い分野にデジタル技術を積極的に取り入れて、社会変化への対応力を高めていくことが重要だと考えます。」

 防災の観点も含めたDXを取り入れていこうという仙台市の取組み。2021年6月には「仙台市デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」を策定した。郡氏は、この計画を実行していく上で、「これからの時代の行政運営においては、「限られた人的資源をいかに効果的・効率的に活用し、市民サービスの質を維持していくか」がカギになるとした。