SWIFTの監督体制
国際的組織として世界に26のオフィスを持つSWIFTの本拠は、ベルギーの首都ブリュッセルから車で1時間近くかかるLa Hulpeという郊外の村にあります。私も行ったことがありますが、森と湖に囲まれたお城のような壮大な建物で、金融ビジネスとは程遠い外観をしています。
このため、SWIFTは法的にはベルギー法人です。ベルギーはEU加盟国ですので、SWIFTはEUの法規制に従うことになります。
SWIFTは主要中央銀行で構成される「オーバーサイトグループ(OG)」の監視を受けます。オーバーサイトグループは、いわゆる「G10中央銀行」から構成されています。G10中央銀行とは、G7の中央銀行にオランダ、ベルギー、スイス、スウェーデンの中央銀行、そして欧州中央銀行を加えた12行から構成されており、「G10」と言いながら今では12行から構成されています。
オーバーサイトグループの会議は、皆がベルギーに集まりやすいよう、スイスのバーゼルにある国際決済銀行(BIS)の関連会議の前後に設定されることが多く、私も参加していました。このオーバーサイトグループでは、ベルギーの中央銀行(ベルギー国立銀行)が筆頭監視者(lead overseer)を務めています。
なお、オーバーサイトグループは先進国ばかりの会合になりますので、2012年、これに10カ国の中央銀行を新たに加えた「オーバーサイトフォーラム(OF)」も、情報共有を目的として形成されました。ここには、上述のG10中央銀行に加え、豪州、中国、香港、インド、韓国、ロシア、サウジアラビア、シンガポール、南ア、トルコの中央銀行が加わっています。
SWIFTからの除外措置
SWIFTは、国際送金を便利にすることを企図し、多くの銀行がフォーマットを統一するために集まった民間組織です。SWIFTは、個々のメッセージの内容に立ち入ることはないとして、“SWIFT is neutral”と、中立的な機関であることを強調しています。そして、「SWIFTに制裁を科す権限はない。制裁を科すのはあくまでそれが可能な政府である」(SWIFT has no authority to make sanctions decisions. Any decision to impose or to lift sanctions on countries or individual entities rests solely with the competent government bodies and legislators)と述べています。
しかし同時に、SWIFTは前述の通りベルギー法人として、EUの法規制に従わなければなりません。
これまで、SWIFTからの除外が政治的な制裁として使われたケースとしてはイランが挙げられます。2012年3月、EU規則267/2012により、SWIFTはイランの銀行をネットワークから除外するよう命じられました。
今回のロシアの7銀行の除外も同様の方法が採られています。すなわち、EUは3月1日、規則2022/345により、ロシアの銀行であるBank Otkritie、Novikombank、Promsvyazbank、Bank Rossiya、Sovcombank、VNESHECONOMBANK (VEB)、VTB BANKという7行を、3月12日にSWIFTのネットワークから除外するように命じました。