北京首都国際空港

 開催中の北京冬季オリンピックでは、その中で実験されているデジタル人民元にも注目が集まっている。オリンピックの場を実験に選んだ意図や背景について、元日銀局長の山岡浩巳氏が考察する。連載「ポストコロナのIT・未来予想図」の第71回。

 中国が実験を進めている中央銀行デジタル通貨「デジタル人民元(e-CNY)」は、2020年4月に国内での実験を開始した段階から、2022年2月の北京冬季五輪会場で試験的に流通させるとアナウンスしていました(第6回第48回参照)。中国人民銀行(中央銀行)は2019年から、デジタル人民元を五輪で試験的に流通させるための特別チームを行内に設け、準備を進めていました。中国当局が五輪について、中国のハイテクへの取り組みを世界に示す場としても大いに期待していたことがわかります。

 ところが、デジタル人民元の試験が開始してからずっと、世界は新型コロナウイルスの影響を受け続けてきました(私も2年以上中国に行けていません)。オミクロン株の感染拡大の中、北京冬季五輪についても、海外からの観客が来られなくなったことは、当局も残念だろうと思います。とはいえ、五輪には選手団や関係者に加え、報道陣も世界中から訪れますので、なお宣伝効果はあるでしょう。

 これまで、デジタル人民元の試験発行用のウォレットアプリは、民間企業が発行するものが使われていました。しかし、北京五輪を控えた本年(2022年)1月、中国人民銀行は自ら、試験版のウォレットアプリの提供も始めています(なお、このアプリをダウンロードするには、デジタル人民元の試験発行が行われる地域にいる必要があります)。