ナイジェリア南西部の都市イバダンの街並み(出所:Pixabay)

 公式には世界で2番目の中央銀行デジタル通貨発行国となったナイジェリア。そのデジタル通貨「eNaira」について、発行の狙い、利用形態などを元日銀局長の山岡浩巳氏が解説する。連載「ポストコロナのIT・未来予想図」の第65回。

 現在、多くの国々が中央銀行デジタル通貨の調査研究を進めており、中国のように国内で広範な実験を進めている国もあります(第6回第48回参照)。もっとも、発行に向けては数多くの論点があり、公式に発行しているのはバハマのみという状況でした(第21回参照)。(東カリブ中央銀行は、現段階では加盟国の半分程度が試験的に発行している段階です。また、中央銀行デジタル通貨類似のスキーム“Bakong”を導入しているカンボジア(第24回参照)は、当局者がこれは中央銀行デジタル通貨ではないと説明しています。)

 この中で本年(2021年)10月、アフリカの大国ナイジェリアが、中央銀行デジタル通貨“eNaira”の公式発行を宣言しました。「当局が公式発行を表明している」という厳密な意味では、世界で2番目の中央銀行デジタル通貨発行国となったわけです。

 バハマは人口約40万人の小国であり、通貨(バハマ・ドル)はドルペッグ、さらにハリケーンに襲われやすい島国であり国内の現金流通が制約を受けやすいという事情も抱えていました。(東カリブ中央銀行の加盟国にも類似の事情があります。) これに対し、ナイジェリアは人口2億人を超え、独自通貨「ナイラ」も有しているという違いがあります。

eNaira発行の狙い
出典:ナイジェリア中央銀行