東京の国際金融市場としての発展は日本が長年取り組んできた課題だが、デジタル時代の新たな要請とは何か。「『国際金融都市・東京』構想に関する有識者懇談会」メンバーである元日銀局長の山岡浩巳氏が解説する。連載「ポストコロナのIT・未来予想図」の第73回。

(以下に述べる中で意見にわたる部分は筆者個人のものであり、東京都や「『国際金融都市・東京』構想に関する有識者懇談会」の公式見解ではありません。)

 東京は従来から、ロンドンやニューヨークなどとともに世界の主要な金融市場の一つです。その一方で、東京を「国際金融市場」としてどう発展させるかは、長年にわたる政策課題でした。

 例えば、英国は経済規模の点では今や超大国とは言い難いですが、首都ロンドンはグローバルな取引を吸引しながら、世界の国際金融市場であり続けてきました。これに対し、東京市場は日本という経済大国を背景とする「大きな国内市場」という色彩が強く、国際性の点ではロンドンなどに見劣りする面が多かったといえます。

世界の主要取引所の比較<2018年>
東京市場は規模は大きいが、国内市場の色彩が強い
出典:JETRO「アジア発スタートアップに開かれる、東証マザーズIPOへの道」(2020年)

市場間競争の激化

 そして現在、東京市場の国際化に取り組むことの重要性は、一段と高まっています。

 その一つの理由は、日本の経済プレゼンスの相対的な低下です。近年の出生数などの動向からみて、先行き労働人口の減少が続くことは避け難く、ここからみても、日本のGDPが世界に占めるウエイトは低下していくと予想されます。このことは、東京市場がその地位を維持していく上で、「国内経済の大きさ」に依存できなくなっていくことを意味します。この中で、金融市場として国内の資金需要を満たすだけでなく、国際社会に貢献する姿勢を示していくことが、市場のプレゼンス確保のためにますます重要になっています。

GDPの中期予測<単位:10億ドル>
出典:Cebr World Economic League Table 2022