国際的な市場間競争も激化しています。ロンドン、ニューヨーク、シンガポール、香港などに加え、中国の急速な経済成長を背景に上海や北京などのプレゼンスも高まっています。欧州でも、英国のEU離脱を契機に、フランクフルトやパリ、アムステルダム、ダブリンなどが地位向上を狙って積極的に取り組んでいます。

 さらに、企業活動の国際化と金融取引のデジタル化も、市場間競争を激化させる方向に働いています。かつて企業にとっては、自国の株式市場への上場がほぼ唯一の選択肢でした。しかし、今では各国の市場の投資家層や規制、自社のビジネス戦略などを勘案しながら、どの市場に上場すべきかを考えるようになっています。

デジタル時代の国際金融市場

 また、デジタル化の時代において、金融市場の国際化を実現する上で、新たに考慮すべき点も増えています。

 かつて金融市場を象徴する光景と言えば、魚市場や青果市場のように、証券取引所の大きなフロアで声や手を使って株式を売買する「場立ち」やディーリングルームでの「電話」でした。しかし、金融取引の電子化が進むとともに場立ちもなくなるなど、今や、広いフロアやディーリングルームは金融市場の必要条件ではありません。一方で、通信環境や情報の集積度、生活環境などの重要性が、ますます高まっています。

 さらに、世界的にSDGsやESG、カーボンニュートラルへの関心が高まる中、金融面でもグリーンボンドやサステナビリティボンドなどの発行量が急速に増えるなど、「グリーン金融」のウエイトが増しています。この中で、例えばルクセンブルグは、グリーン金融取引の誘致に精力的に取り組んでいます。今や国際金融センターには、世界の持続可能性など、経済的・社会的課題の解決への貢献が求められるようになっています。

グリーンボンドの年間発行額
出典:Tokyo Green Finance Initiative報告書(2021年)

「グリーン」と「デジタル」

 このような情勢の変化を踏まえ、東京都は2021年6月に、グリーン金融市場の発展に向けた“Tokyo Green Finance Initiative(TGFI)”を作成しました。そして、この検討成果を活かす形で、同年11月、2017年に既に策定されていた「『国際金融都市・東京』構想」を、「グリーン」と「デジタル」を基軸に改定する形で、「『国際金融都市・東京』構想2.0」を策定しました。

https://www.seisakukikaku.metro.tokyo.lg.jp/news/gfct/tokyo-green-finance-initiativetgfi.html

https://www.seisakukikaku.metro.tokyo.lg.jp/pgs/2021/10/images/kousou2.pdf

 大都市である東京は、大学などの教育・研究機関や文化、芸術、グルメなどが集結し、世界の都市の中では治安も比較的良好です。鉄道や空港などの交通網も発達し、頑健な決済インフラも有しています。さらに、5Gなど通信インフラの整備にも積極的に取り組んでいます。これらの要素は、「グリーン」や「デジタル」などの要請に応え得る国際金融市場を作っていく上でも、大きな力になるものです。