なお、昨年10月のインディアナポリスでの大会でシステムトラブルやクラッシュで記録なしに終わった4チームは、ピットレーン脇にテントが建てられチームメンバーも招集されたものの、レースには不参加だった(4チームとは、ハワイ大学とカリフォルニア大学サンディエゴ校からなる「AI Racing Tech」、パデュー大学とウェストポイント陸軍士官学校からなる「Black & Gold Autonomous Racing」、バージニア大学の「Cavalier Autonomous Racing」、マサチューセッツ工科大学、ピッツバーグ大学、ロチェスター工科大学、ウォータールー大学からなる「MIT-PITT-RW」)。

メディア関係者はピット裏での取材が許可された。レースはCESの一般来場者には非公開で行われたので、来場者の大半はCES主催者CTAや出場チーム、スポンサー企業の関係者である。ピットロードに沿って9つのチームのテントが並ぶ(筆者撮影)

 レースは12時15分、会場アナウンスによってチーム紹介が始まり、地元ラスベガスの女性シンガーによる国歌斉唱の後、CESの主催団体CTA(全米民生技術協会)のナンバー2、エグゼクティブバイスプレジデントのカレン・チュプカが開会宣言を行った(当初はCEOのゲイリー・シャピロが開会宣言を行うとアナウンスされていた)。会場にはFOXやAFP(フランス通信社)のテレビカメラクルーも取材に来ており、メインスタンドに観客の姿はないものの、モータースポーツらしい盛り上がりの中、レースはスタートした。

 なお、今回のIAC@CESの勝敗の決め方はこうだ。まず各チームの1台ずつが順にウォーミングラップも含めてコースを10周走ってタイムトライアルを行い、ベストタイムによって5チームによる決勝トーナメントの組み合わせを決める。

 決勝トーナメントでは2台のクルマがコース上に出て、直接対決(Head to Head)で10周のレースを行う。ただし(F1の決勝のようにスターティンググリッドからのスクラッチのスタートではなく)ピットレーンからの時間差によるローリングスタートのため、勝敗は見かけの順位ではなく、規定の周回中に記録した最高時速で勝敗が決まる。

ラスベガスモータースピードウェイは全長1.5マイル(約2.4キロメートル)の台形型オーバルコースだ。全長2.5マイル(約4キロメートル)のインディアナポリスモータースピードウェイよりも直線部分が短く、スピードが出にくいのが特徴だ(出所:クラブハウス内の写真パネルを筆者撮影)

 今回のレースで興味深かったのは、レースのペースカーの大役をHalo社の自動運転車が務めたことだ。Halo社は地元ラスベガスでT-モバイルの5Gを活用し、昨年夏から自動配車サービス(借り手の家まで自動で配送し、利用後は自動で回収する)を行っている。昨年10月のインディアナポリスでのレースではロボットがゴールのチェッカーフラッグを振っていたが、無人ペースカーも自動運転車のレースとして興味深い演出と感じた。

(動画)レースカーを先導してコースに出るHalo社の自動運転車(筆者撮影)

予選から決勝トーナメントへ、勝利の行方は?

 1台ずつがタイムトライアルを行う予選の走りを見て筆者がすぐに気がついたのは、前回インディアナポリスで優勝したTUM(ミュンヘン工科大学)、準優勝のTII EURORACING(モデナ・レッジョ・エミリア大学+テクノロジーイノベーション研究所)、そしてPoliMOVE(ミラノ工科大学+アラバマ大学)の3チームの力が高いレベルで拮抗していることだ。

 特にPoliMOVEは予選レースの開始直後、低いタイヤ温度を上げるために小刻みにスラローム走行を行うなど、レースに勝つための芸の細かいプログラミングも行っていたのが印象的だった。

 予選のタイムで決勝の組み合わせは、KAIST(韓国科学技術大学)とAutonomous Tiger Racing(オーバーン大学)の勝者がPoliMOVEと戦うブロックと、TII EURO RACINGがTUMと戦う2つのブロックに分けられた。

 まずKAISTとAutonomous Tiger Racingの1回戦はAutonomous Tiger Racingがマシントラブルでなかなかコースに出られず自滅して脱落、2回戦のPoliMOVEとKAISTはPoliMOVEのハイペースにKAISTが全くついて来られず、最後はKAISTがバックストレートでスピンしてあっさり勝負が決まった。

 反対側のブロックのTII EURORACINGとTUMの対決は前回のインディアナポリス大会以来の遺恨の対決であり、予想通り見応えのある熱い対決になったが、レース終盤にTII EURORACINGが第3コーナー付近で防護壁に激突、走行不能に陥って、TUMが決勝にコマを進めた。

 そしてPoliMOVEとTUMの決勝は期待に違わず、ファイナルに相応しい、両チーム決勝仕様のハイレベルな戦いになった。クラブハウスに引っ込んでいたメディアやスポンサー関係者もピット裏まで出てきて、差しつ差されつの勝負の行方を見守った。筆者には最高速度という点では前半に積極的に攻めたTUMがやや有利かと思われたが、土壇場の最終ラップでPoliMOVEが最高時速173マイル(約278.4キロメートル)を記録したというアナウンスが会場に流れ、PoliMOVEの逆転優勝が決まった。