前述した「オンラインにおける米国人の選択と技術革新法」では、支配的なオンラインプラットフォームが自社の製品・サービスを優遇することを禁じる。

 法が成立すれば、競合アプリを自社アプリストア内で配信しているアップルや米グーグルの事業に大きな影響が及ぶとみられている。プライベートブランド(PB)商品を自社の電子商取引(EC)プラットフォームで販売し、出品業者と競合している米アマゾン・ドット・コムにも影響が及ぶとみられている。

 後者の「アプリマーケット開放法」も、プラットフォーム上で自社製品を優遇することを禁じる。だが、こちらはアプリストアに特化するものになる。アプリの配信方法に関し、アップルやグーグルが外部開発者に規約などの条件を設けることを禁じるもので、例えば、自社決済システムの利用を義務付けることができなくなる。

深まる賛否の対立

 アップルのティム・クックCEO(最高経営責任者)や同社ソフトウエアエンジニアリング担当上級副社長、クレイグ・フェデリギ氏などはこれまで一貫してサイドローディングの危険性を訴えてきた。

 フェデリギ氏は21年11月、欧州のテクノロジーカンファレンス「Web Summit(ウェブサミット)」に登壇し、「パンドラの箱を開けるようなものだ」と指摘。「ハッカーやネット詐欺師がApp Store以外でマルウエア(悪意にあるプログラム)をインストールさせることを許してしまう。ウイルスに感染した機器が1台でもあればネットワーク全体を脅かす。政府や公共インフラ、企業のコンピューターシステムも危険にさらされる」と説明した。

 これに対し、音楽配信大手のスウェーデン・スポティファイ・テクノロジーや人気ゲーム「フォートナイト」の開発元である米エピックゲームズなど数十社・団体でつくるNGO「アプリの公平性のための連合(CAF)」は反論。「プライバシー保護のための広告規制や高額な手数料の支払いなどを定めたアップルのアプリ規定は反競争的だ」と激しく批判している。

 IT大手に対する規制強化法を巡っては、さまざまな意見が出ており、賛否の対立が激しさを増している。テクノロジー企業を代表する米業界団体のチェンバー・オブ・プログレスは、クロブシャー議員の法案について「消費者が享受している便利で安価なサービス・商品を禁止しようとしている」と批判。

 「法が成立すれば、アマゾンの低価格乾電池も無料配送もなくなる。アップルが自社アプリを標準搭載することも禁じられる。グーグル検索の結果ページには地図が表示されなくなる。スマホや検索はあまり役に立たなくなり、配達は遅くなる」(チェンバー・オブ・プログレス)

 CNBCによると、情報技術イノベーション財団(ITIF)も「不公正な競争を生じさせ、消費者に損害を与えてしまう」と批判。法案に対する懐疑的な考えを示している。

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