店舗型モビリティで個店が一等地で輝く環境をつくる

 創業に至る経緯を代表の森口氏は、こう語る。

「会社を立ち上げたのは、お客さま目線で見たときのキッチンカー体験が素晴らしいものだと感じたから。冷めた弁当を持ってコンビニのレジに並んでいるのとは全く違い、キッチンカーに並んでいる人たちの表情は、ニコニコとしていたのです」

 そこで、キッチンカーの状況を調べたところ、市場が大きく伸びる感覚があった。また、当時はこの分野でIT活用が進んでおらず、「キッチンカー×ITで生み出される価値は限りなく存在し、これをうまく引き出すと事業領域も増えていく」と確信したのだった。

 当初はキッチンカー事業者への予約システム等の提供を事業としていたが、事業者それぞれのオペレーションがまちまちであったことから限界を感じるようになった。

 そこで、「キッチンカー事業者はどんなことに困っているのか」という観点に立ち、ヒアリングを重ねていったところ、「出店する場所がなかなか見つからない」ということが分かった。

 そして、不動産業者に営業をし、キッチンカーの出店場所を段々と増やしていく中で、「キッチンカー事業全体の支援」というスタンスが固まっていき、「しっかりとした車を届ける」という発想が生まれるようになる。

 そこで、トヨタグループとディスカションを重ね、業務提携をしてMellow仕様のキッチンカーを開発。そうしてできた車が「タウンエース」をベースにし、基本的なキッチン機能を付けたもの(残価設定型ローンで5年リース。初期費用が96万円で、車検や保険料等を含めて月額8.5万円)で、Mellowはこの車のリースやレンタルも行うようになる。
このときには、Mellowは「キッチンカーの開業支援、開業後のサポートを行うキッチンカーのパートナー」を標榜するようになり、継続的に売り上げを上げていくコツをセミナーで伝えるようになっていた。

 森口氏はこう語る。

「飲食業界はクリエイティビティが価値の源泉にあると思っています。つまり、大手数社で70%くらいのシェアを持つということは起こり得ないということ。個店がそれぞれ輝くクリエイティビティを街の中に残すことが大事なのですが、再開発などで地価や不動産の価値が上がると賃料はものすごく上がり、チェーン化比率が高くなり、個店がなかなか入り込めなくなる。そこで店舗型モビリティによって、個店が一等地で輝く環境をつくることができるようにしたのです」

 しかも、固定店舗に対して店舗型モビリティは出店に関わるリスクを抑えられるのが、特徴の一つ。営業戦略を組み立てるときも、店舗型モビリティの方が「攻める」仮説を立てやすくなる。