三菱地所コミュニティが管理するマンションを対象に“走る専門店の停留所”「SHOP STOP」を本格展開(2020年10月1日よりスタート)
コロナ禍にあって飲食業の中に店舗数が増えた業態がある。それは「キッチンカー」。自動車を改造しキッチン機能を設けて、遊休地や駐車場で主にランチタイムに飲食を提供する業態だ。
デジタル技術を使い、この分野で著しい成長を遂げている企業が株式会社Mellow(本社/東京都千代田区、共同代表/石澤正芳・森口拓也)。同社は2016年2月に設立され、2021年11月末段階でキッチンカーの登録店舗数が1400店舗、出店場所は600カ所を超えている。登録店舗数がコロナ禍前の2019年12月に比べて、41.16%も増加しているのだ。
Mellowのメインの事業は空きスペースとキッチンカーをマッチングするプラットフォーム。ビルの敷地や公園などでキッチンカーの営業ができるように仲介し、キッチンカーの事業者はMellowに登録すれば、営業する際にビルのオーナー等に直接交渉する必要がない。
店舗型モビリティで個店が一等地で輝く環境をつくる
創業に至る経緯を代表の森口氏は、こう語る。
「会社を立ち上げたのは、お客さま目線で見たときのキッチンカー体験が素晴らしいものだと感じたから。冷めた弁当を持ってコンビニのレジに並んでいるのとは全く違い、キッチンカーに並んでいる人たちの表情は、ニコニコとしていたのです」
そこで、キッチンカーの状況を調べたところ、市場が大きく伸びる感覚があった。また、当時はこの分野でIT活用が進んでおらず、「キッチンカー×ITで生み出される価値は限りなく存在し、これをうまく引き出すと事業領域も増えていく」と確信したのだった。
当初はキッチンカー事業者への予約システム等の提供を事業としていたが、事業者それぞれのオペレーションがまちまちであったことから限界を感じるようになった。
そこで、「キッチンカー事業者はどんなことに困っているのか」という観点に立ち、ヒアリングを重ねていったところ、「出店する場所がなかなか見つからない」ということが分かった。
そして、不動産業者に営業をし、キッチンカーの出店場所を段々と増やしていく中で、「キッチンカー事業全体の支援」というスタンスが固まっていき、「しっかりとした車を届ける」という発想が生まれるようになる。
そこで、トヨタグループとディスカションを重ね、業務提携をしてMellow仕様のキッチンカーを開発。そうしてできた車が「タウンエース」をベースにし、基本的なキッチン機能を付けたもの(残価設定型ローンで5年リース。初期費用が96万円で、車検や保険料等を含めて月額8.5万円)で、Mellowはこの車のリースやレンタルも行うようになる。
このときには、Mellowは「キッチンカーの開業支援、開業後のサポートを行うキッチンカーのパートナー」を標榜するようになり、継続的に売り上げを上げていくコツをセミナーで伝えるようになっていた。
森口氏はこう語る。
「飲食業界はクリエイティビティが価値の源泉にあると思っています。つまり、大手数社で70%くらいのシェアを持つということは起こり得ないということ。個店がそれぞれ輝くクリエイティビティを街の中に残すことが大事なのですが、再開発などで地価や不動産の価値が上がると賃料はものすごく上がり、チェーン化比率が高くなり、個店がなかなか入り込めなくなる。そこで店舗型モビリティによって、個店が一等地で輝く環境をつくることができるようにしたのです」
しかも、固定店舗に対して店舗型モビリティは出店に関わるリスクを抑えられるのが、特徴の一つ。営業戦略を組み立てるときも、店舗型モビリティの方が「攻める」仮説を立てやすくなる。
〔事例〕人気肉料理店「肉山」がランチ・ディナーともキッチンカーで攻める
これまでMellowのキッチンカーはランチタイム限定であったが、2021年10月12日にから「家飲みキッチンカー」の取り組みを始めた。これはマンションの敷地に出店するキッチンカーで出来立ての料理のほか、生ビールやカクテルなどを提供するというもの。
予約が取りにくい人気の肉料理店「肉山」(東京・吉祥寺)ではコロナ禍前の2019年9月からキッチンカーを手掛けており、かねて夜型のキッチンカーを稼働させたいと考えていたため、ディナー営業をスタートさせた。また、ランチタイム営業が好調であることから2021年11月1日より2号車を稼働させ、販売チャンスを広げている。
火曜日のランチタイムに「肉山2号」が東京・市ヶ谷に出店
メニューはこの「肉山赤身ローストビーフ丼」1000円(税込、以下同)のほか、「肉山カレー赤身ローストビーフのせ」1000円、「肉山カレー」800円
東京・青砥のマンション敷地で「家飲みキッチンカー」を営業している様子
「家飲み『肉山』セット」1500円。このほか「牛赤身」「三元豚」「牛ホホ肉の赤ワイン煮込み」「パテ・ド・カンパーニュ」など吉祥寺の店で提供する肉惣菜も充実
重視するのは「納得度の最大化」と「売り上げの最大化」
キッチンカー事業者がMellowに登録する場合、最初に説明会に参加する。ここでは会社の説明に続き、参加者の疑問を解消するためのQ&Aの時間が十分に設けられている。例えば、「大雪になったら?」「体調が悪くなり休みたいときは?」「出店場所は選べるのか?」など。これらに納得してから登録に至る。
キッチンカー事業者が登録するとMellowから出店場所の案内が届くようになる。この時、出店場所の売上実績、建物周辺の状況などの情報も提供され、キッチンカー事業者はそれに納得してから出店を申し込む。
申し込みを受け、Mellowはスケジューリングを行うが、広いスペースに複数のキッチンカーが出店する際、そこで提供されるメニューのカテゴリーが被らないようにしている。Mellowが重視するのは、キッチンカー事業者の「納得度の最大化」と「売り上げの最大化」なのだ。
森口氏によると、人員数で生産性を見た場合、「固定店舗1店はセントラルキッチン(CK)1つとキッチンカー3台と同じ」という。キッチンカー1台が目標とする月間売り上げは100万円だが、オペレーションを仕組み化できれば、この売り上げはアルバイト1人の運営で実現可能。現状、キッチンカー3、4台を運営している事業者は少なからず存在し、増える傾向にあるのには、そうした背景があえる。
「固定店舗1つ」と「CK1つとキッチンカー3台」を比べた場合、カバーできる商圏は後者の方が広域になる。また、CKではキッチンカーが稼働している時間帯にゴーストレトランを営業することもでき、さらなる売り上げ拡大を図ることができる。
店舗型モビリティで社会課題の解決にも取り組む
Mellowのメインの事業が空きスペースとキッチンカーをマッチングするプラットフォームであることは前述したが、これを含め、Mellowが行う現在の事業は大きく4つ。
1つ目が、「店舗型モビリティビジネスプラットフォーム」。これは「SHOP STOP」というブランドで展開している。BUS STOPがバスの停留所であればSHOP STOPは店の停留所ということで、そこには毎日さまざまな店がやって来る。例えば、毎朝焼き立てのパン、産地直送の鮮魚や野菜、休日になると書籍、雑貨、古着やネイル、マッサージのお店など。
つまり、「店に行く」のではなく「店がやってくる」というサービスだ(利用者が「SHOP STOP」のアプリを取得するとキッチンカーをはじめ、近くで出店している店舗型モビリティが探せ、価格などサービスの内容が分かるようになる)
2つ目が、「キッチンカー開業経営支援」。同社が豊富に持つキッチンカーと出店場所のマッチングのデータを活用して、開業支援や経営支援を行っている。同社ではキッチンカー事業者の夢と現実を数多く見てきており、それをこの事業に生かしている。
そこで、Mellowが用意したのが「フードトラックONE」という開業パッケージ。同社が持つ年間約5万回以上のキッチンカー営業データを分析し、「メニュー選定」「車両選び」「営業場所の確保」を支援している(ある場所では売れるメニューであっても、どの場所でもそうとは限らない。キッチンカー経営で大事なポイントは「営業場所とメニューの相性」であるという)
3つ目が、「店舗型モビリティ事業開発支援」。これは「顧客を待つ」から「顧客のところへ行く」という考え方で、あらゆるサービスを店舗型モビリティにする支援を行うということ。同社にはキッチンカーに限らず、小売店をはじめ、マッサージ店、保険相談契約店などさまざまな業種の店舗型モビリティ化の実績があり、そのノウハウでそれぞれの事業に合ったビジネスモデルづくりからオペレーション構築までサポートしている。
改正卸売市場法の施行に伴い、新たな業態にチャレンジする豊洲市場仲卸事業者をサポート。仲卸事業者がMellowの出店プラットフォームを活用してフードトラックおよび鮮魚小売移動販売事業に参入した(2020年6月21日)
住友生命保険相互会社と業務提携してウエルネス体験を通じて保険との出会いを創出する保険×モビリティ「インシュアランスモビリティ」の実証実験を行った(2021年3月)
移動型の八百屋「食べチョクカー」と題して、農畜水産物の産直通販サイト「食べチョク」で取り扱う食材を、都内のマンションや公園を中心に期間限定で直接販売。産直野菜などの食材を生産者のこだわりや想いを提示して届けるとともに、不定期で生産者とオンライン(Zoom)でその場でつながる機会を提供(2021年10月)
そして、4つ目が「地方創生の取り組み」。これは、地方で進む人口減少に伴って公共施設などの維持管理費が不足したり、人口密度が下がっていくことで医療・商業など生活サービスのインフラが存続できなくなるといった、社会課題を解決する取り組みだ。
具体的には、施設を使わず、店舗モビリティへの切り替えを支援する。既に事例があり、その1つが、山口県のアンテナショップをキッチンカーにしてオフィス街や住宅街で展開したもの。また、2020年6月に大阪府豊中市と包括連携協定を結んでから、市内の公園や団地などにキッチンカーを定期的に出店したり、市内事業者のキッチンカー開業支援を行うなど、市内の産業支援につなげる取り組みを行っている。
Mellowのパーパス(存在目的)は「それぞれの豊かさを、それぞれの想いで。」
その意図することは、社会の多様性が進んでいく中で、それぞれの豊かさを求める原動力、つまり「想い」を満たし続けることができる社会を目指しているということ。豊かさを求める原動力、つまり「想い」の最大化である。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは「進化し続けるテクノロジーが人々の生活を豊かにする」という概念だ。Mellowの取り組みは「モビリティ」で、社会の中のさまざまな「想い」を満たし、人々の生活を豊かにしていく取り組みなのだ。






