脱炭素化とクリーンエネルギー取引

 まず、脱炭素化が世界の主要アジェンダとなっている現在、企業には、クリーンなエネルギーを使ってモノやサービスを生産していることを外部に効率的に示すことが求められています。これに対して、電力取引に用いるデジタル通貨の付加領域にプログラムを書き込むことでクリーンなエネルギーを選んで購入し、また、その記録を自らがカーボンニュートラルと整合的な企業活動を行っていることの証明に使えるようにし、資金調達などに役立てるようにする試みが行われています。

出典:デジタル通貨フォーラム プログレスレポート

地域経済の振興

 地域経済の振興も、現在の重要な課題となっています。これについては、地域における消費や経済活動の活性化、地域のつながりの強化、民間と行政との連携の強化などのためにデジタル通貨を活用する取り組みも進められています。例えば、ネットショッピングも含めた地域の特産品の消費促進や、地域に貢献する活動への対価としてのデジタル通貨の供与などが検討されています。

出典:デジタル通貨フォーラム プログレスレポート

重要なのはエコシステムの構築

 デジタル決済の取り組みとは、単に紙の現金をキャッシュレスにすることではありません。経済社会が抱えている課題を一つひとつ拾い出し、これらをデジタル技術を通じてどう解決できるのか、具体的に考えていく必要があります。もちろん、そのためには技術だけでなく、実務や慣行、時には制度なども柔軟に見直していく必要があるでしょうし、産業横断的に進めていくことも求められます。デジタル通貨フォーラムは今後とも、このような取り組みを積極的に進めていく考えです。

◎山岡 浩巳(やまおか・ひろみ)
フューチャー株式会社取締役/フューチャー経済・金融研究所長
1986年東京大学法学部卒。1990年カリフォルニア大学バークレー校法律学大学院卒(LL.M)。米国ニューヨーク州弁護士。
国際通貨基金日本理事代理(2007年)、バーゼル銀行監督委員会委員(2012年)、日本銀行金融市場局長(2013年)、同・決済機構局長(2015年)などを経て現職。この間、国際決済銀行・市場委員会委員、同・決済市場インフラ委員会委員、東京都・国際金融都市東京のあり方懇談会委員、同「Society5.0」社会実装モデルのあり方検討会委員などを歴任。主要著書は「国際金融都市・東京」(小池百合子氏らと共著)、「情報技術革新・データ革命と中央銀行デジタル通貨」(柳川範之氏と共著)、「金融の未来」、「デジタル化する世界と金融」(中曽宏氏らと共著)など。

◎本稿は、「ヒューモニー」ウェブサイトに掲載された記事を転載したものです。