ネット企業から転身した成田氏の目に映った日清食品の意外な姿

 成田氏は大手コンサルティングファームを経て、ネット企業のディー・エヌ・エー(DeNA)とメルカリでIT戦略に携わった後、2019年12月から日清食品HDの一員に加わった。ちょうど日清食品グループが「デジタル元年」を宣言し、「DIGITIZE YOUR ARMS(デジタルを武装せよ)」をスローガンにDXへ向け、アクセルを踏み込んだ年である。

 デジタルネイティブと言えるような企業を渡り歩いてきた成田氏の目に、当時の日清食品グループはどう映ったのだろうか。「想定していたよりもずっと組織間の壁が低く、トップの強いコミットメントでデジタル化が着実に進められていました」

 60年を超える歴史のある大企業であり、しかもデジタルとの関連が薄い食品業界に属する日清食品グループが、躊躇なくデジタル化に突き進むさまは成田氏にとって予想外だったようだ。

 なぜ、それだけスピーティに動き出すことができたのか。その理由について成田氏は、「社内でDXの陣頭指揮を執る安藤徳隆COOが、デジタルを活用して業務を変革していかなければ、グローバルカンパニーとして生き残るのは難しいという強い危機感を持ち、それを社内で共有していたから」と言う。

スローガン「DIGITIZE YOUR ARMS」を浸透させるべく、社内報で公開されたイメージビジュアル。デジタル機器で武装したサムライやアンドロイド化された同社のキャラクター「ひよこちゃん」が描かれている

 それ故、「私が入社してからも、変化を起こすことに対して社内から反対されることはほとんどありませんでした」と言う。

 デジタル化のファーストステップとして日清食品グループでは、「脱・紙文化」と「エブリデイテレワーク」を掲げていた。テレワーク環境の整備は、2020年に予定されていた東京オンリピック・パラリンピック期間中の出社制限を想定したものだったが、コロナ禍によってむしろ予定より早く整備が進んだ。

 一方で、申請や決裁などには紙による業務フローが数多く残されていた。そこで成田氏が着手したのは、ローコードツール活用による現場主導でのペーパーレス/ハンコレス化の推進である。