想定の5倍売れたが良くない循環に陥る

 代表の宮野氏は1981年9月生まれ。15歳でアメリカに渡り、ハイスクールを卒業した後、天津甘栗の販売を手掛けた。これがよく売れてロサンゼルスで多店化しニューヨークにも進出。しかしながら、2001年に9・11のテロに遭い、帰国することに。帰国後は成長途上のコーヒーショップチェーンに入社し5年間勤務。テックスメックス(メキシコ風のアメリカ料理)の店舗で起業し4年間で5店舗を展開するまでになったが、その店を手放すことに。そして、クリスプ創業店を立ち上げた。開業前に掲げた経営理念は「熱狂的なファンをつくる」ということ。

 宮野氏はこう語る。

「飲食業にとって一番大事なことは、働く仲間に、お客さまに、お店に、愛情をもって本気で向き合うこと。これは絶対に忘れてはいけない本質だと思っている」

 この信念によって創業の店は想定の5倍を売り上げた。しかしながら、その一方でこの繁盛ぶりは「本来の飲食店の姿ではない」と感じるようになった宮野氏。それは、サラダをつくることだけに一生懸命になり、結果、クオリティも下がる、お客さまもイライラする・・・といった良くない循環に陥っていたからだ。

「例えば、夜中にスーツ姿のお客さまが来店したら『まだ、お仕事でしたか? 夜遅くまで大変ですねぇ、今日も一日お疲れさまでした!』というちょっとしたことだけど、そんな一言こそがお店の価値であり、競争優位性であり、注文や購買に必要ない無駄な会話や行為こそが飲食店にしかできない価値を生み出す源泉のはず」

 宮野氏はこのように考えるようになり、「機械でできることは全部機械に任せて、人間は人間だけが価値を生み出せるような人間らしい行為に時間を使えるようにしよう」と判断した。

 その結論は「儲かったお金はとにかくテクノロジーに投資して、既存の飲食の在り方を全部、再定義しよう」ということ。2016年の当時である。

 こうして、2017年にテクノロジーを開発する株式会社カチリを設立し、同年7月にモバイルオーダーアプリ「CRISP APP」をリリース(2020年10月1日に、クリスプHD、クリスプ、カチリが合併し、CRISPとなる)。現在はサラダ専門店のリアル店舗「CRISP SALAD WORKS」20店舗のほかに、後述する多様なサービスを展開している。

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