適性検査で分かること
適性検査についての塚本氏の分析はこうだ。日本で使われている適性検査は150種類程度あるが、まず、それらは3つに大別できるとする。
①学力テスト的なもの
②性格、価値観を見るもの(優劣有)
③性格、価値観を見るもの(優劣無)
塚本 弊社が「優劣有」と呼ぶのは、リーダーシップとかストレス耐性のように性質を判断する問いに対し、最終的に点数がつくもの。それに対し、優劣無は、外向/内向とか、拡散/保全のように、その人の価値観がどちらに寄っているかを見るもの。一見、違いはなさそうなのですが、実はこの2つを比較すると、入社後の活躍(定着)予測の精度が大きく違うという結果が出ています。優劣有のテストはほとんど入社後の活躍や定着に関係がありません。実は、150種類の適性検査のほとんどが優劣有のタイプになっているので、過去の適性検査は実はほとんど当たらないというのが、弊社の主張です。
そこで指摘するのは、最終的にスコアを作ろうとすると必ず選択肢のどこかに答えを設定せざるを得ないという点だ。受験者側にするとその答えを見つけさえすれば点数を上げることができる。それが、これまでの適性検査の結果となる。例えば、ストレス耐性を測る質問「すぐに気分が落ち込む」に対し、「当てはまる」と「当てはまらない」の選択肢があると、当然「当てはまる」を選択するとスコアが下がると考える。となれば、「当てはまる」をチェックする人は少ないと容易に推測できるわけだ。
実際のデータを元に検証したところ、某社の場合、適性検査の結果、ストレス耐性が高いとされた人の方がむしろすぐ辞めていたという例もあったという。
塚本 その会社で議論させていただいたのは、むしろ「自分は完璧である」と言っている人の方が辞めている。「ちょっと自分って疲れているときがあるよね」と、率直に書いている人の方が定着していた。今まで信じられていたこともデータで検証すると実は間違えているということが分かる。
弊社のやり方としては、まず自社の従業員に適性検査を受けてもらって、自社で活躍できている人がどんな人で、活躍できていない人がどんな人かを定量的に明らかにして、それを応募者の適性検査の結果に当てはめることで、自社における活躍可能性を割り出していくという流れになります。
既存のデータを定量化し、それを新規のデータに当てはめることで予測する。このフレーム自体はデータ分析としては一般的な形式だが、それを人事の領域で使えるようにしたこと、この一連のフレームに適した適性検査、および分析手法を最適化するというのがアッテルの取り組みということになる。
具体的には、定量化のモデルは汎用化したものを用いて、そこから自社の「ハイパフォーマー」および「ローパフォーマー」がどういう性質を持つ人なのかを割り出す。非常にシンプルな流れだが、これが一番強力だということが分かっていると塚本氏。
上の図の場合、赤の線に近い、「達成意欲」や「自信」といった項目に高いスコアを持つ人であればハイパフォーマーになりやすいということになる。ただ、適切な採用(配置)基準を作るには、自社におけるハイパフォーマーの特徴を知ることより、ハイパフォーマーとローパフォーマーの違いを知ることが重要になる。また、会社・業界ごとにハイパフォーマーの定義は当然異なり、分析のフレームは共通のものだが、会社ごとに独自の基準ができるという。
塚本 何がハードルになるかというと、誰をハイパフォーマー、誰をローパフォーマーとするかという最初のステップです。本人には返さない、公開しないデータですが、そこが一番のネックになります。逆に言うと、今までの人事では自社で誰がいい採用だったか、誰が悪い採用だったかという振り返りがされていないということなんです。当然、PDCAが回せず、改善されてこなかったというのが数十年続いてきた。人に対してABCと評価を付けにくいとは思いますが、それをきちんと付けることが改善の第一歩なのかなと思います。イメージとしては、自社でもう一度採用したいという人をハイに、もう1回来たら採用を悩むという人はローにしてくださいとお伝えしています。
とはいえ、これまでは活躍したが今後の戦略において活躍しなそうな人はローパフォーマーになってしまう可能性もある。そこは、やはり戦略にひも付くものという考え方だ。また、利用目的を間違えないようにすること。あくまで確率論であって、ハイパフォーマーのスコアを持っていてもローパフォーマーになる人もいる(逆も然り)。1つの目安として使うということ。
1つ面白いのは、ひも付けて見せない工夫はしているが、データとしては個人を特定しておくこと。特に、数百人規模の会社では「誰と似ている(似ていない)のか」は貴重なデータになる、と。ただ、性別は入れない。データの観点ではフラットにするというのが基本になっている。例えば、女性の割合を増やしたいというニーズに対応して性別を入れる場合もあるが、それは「濁った使い方」なのだと塚本氏は言う。サービスの根幹として、データの扱いに関して非常にクリアな設計がされていることが分かる。
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