ステーブルコインとは何か?

「ステーブルコイン」には決まった定義があるわけではありませんが、一般には、何らかの方法で価値の安定を図ったデジタルマネーを指します。

 2009年に登場したビットコインや、その後登場した暗号資産は、価値の変動が大きくなりがちでした。誰も、明日値上がりすると思うものは支払いに使いたがりませんし、明日値下がりすると思うものは受け取りたがらないため、価値の変動するものは支払手段には使いにくいわけです。このため、ビットコイン型の暗号資産は支払決済には殆ど使われず、ほぼ投資の対象となってきました。

 そこで新たに登場したのが、ビットコインと同様にブロックチェーンや分散型台帳技術(DLT)などのデジタル技術を使いながら、価値の安定を図った「ステーブルコイン」です。価値を安定させるにはいくつかの方法がありますが、最もわかりやすい方法は、国債や中央銀行預金、付保預金などの「安全資産」を裏付けとする方法です。

 ステーブルコインの価値がドルや円などと結びつけられるのであれば、当局の大きな悩みは一つ減ることになります。なぜなら、米国内で国内取引にドルの代わりにビットコインが広く使われれば、その分、国内の金融政策の有効性は失われてしまい、ドルをいくら操作しても、ビットコインで行われる経済取引には影響を及ぼせないからです。しかし、ドル建ての支払手段が使われるのなら、理論的には金融政策の有効性は損なわれません。

 フェイスブックが主導していた「リブラ」も、当初、複数の通貨建ての資産を裏付けにする計画でした。しかし、各国の強い警戒を受け、現在は「ディエム」と名称を変え、米ドル建ての資産だけを裏付けとするものを発行していく方針へと転換しています(第37回参照)。これも、上述のような事情を踏まえたものといえます。

ステーブルコインの課題

 しかし、暗号資産の重要な課題を解消したように見えるステーブルコインも、規制監督当局の立場からは、検討すべき点がいくつかありました。

 まず、数多く登場しているステーブルコインの価値が、本当に「ステーブル(安定している)」かという問題です。