9月に「デジタル庁」が発足したが、行政のデジタル化・DX(デジタル・トランスフォーメーション)を進める上で重要な点は何なのか。元日銀局長の山岡浩巳氏が解説する。連載「ポストコロナのIT・未来予想図」の第51回。

「日本のデジタル化」というと、「遅れている」と言うのがお決まりになっています。もちろん、今月のデジタル庁の発足も、そうした問題意識に基づくものでしょう。

 デジタル化の遅れの背景として、数多くの要因が指摘されています。制度、文化、歴史、産業構造、技術…。いずれも、それなりに真実を突いている部分があるでしょう。ただ、文化や歴史の違いは、今さらどうなるものでもありません。せっかくデジタル庁を作ったのですから、「政策で何とかできる部分」を見つけて取り組むことが大事です。

「デジタル化の遅れ」は本当か?

 まず、日本のデジタル化は、実際にはどの程度遅れているのでしょうか。

 数多くの調査がありますが、代表的なものとして、国際連合の“E-Government Survey 2020”による“E-Government Development Index”に基づく国別順位をみると、確かに最上位にはデンマークやエストニア、フィンランド、スウェーデンといったデジタル化でおなじみの国々が並んでいますが、日本も上位グループの一画を占めており、決してスコアが悪いわけではありません。

国際連合“E-Government Survey 2020”による各国のEGDI指数ランキング
出典:国際連合“E-Government Survey 2020”