現在、国際送金の利便性向上はG20の重要なテーマとなっているが、デジタル技術革新は、国際送金を便利にし得る面と、むしろ複雑にする面の両面がある。元日銀局長の山岡浩巳氏が解説する。連載「ポストコロナのIT・未来予想図」の第45回。
現在、G20など国際的フォーラムの主要課題の一つが、「国際送金の利便性向上」です。G20の要請を受け、この7月には国際決済銀行(BIS)や国際通貨基金(IMF)、世界銀行などが共同で報告書を公表しています。
「リブラ」の元々の狙いも国際送金の改善
2019年6月にフェイスブックが主導する形で計画を公表したデジタル通貨「リブラ」は、その目的として、「デジタル技術革新の恩恵が国際送金に十分に及んでいない状況を改善する」ことを掲げていました。今や、地球の裏側にいる人にも電子メールを直ちに、ほぼタダで送れるのに、国際送金には時間もコストもかかっている状況を改善したいというわけです。
確かに、以前であれば地球の反対側にいる人とメッセ―ジをやり取りしようと思えば、高い電話代を払って国際電話をかけたり、手紙やFAXを送らなければなりませんでした。もちろん、国際電話料金も時代とともに徐々に安くなってきたわけですが、インターネットと電子メールの発達は、コミュニケーションのスピードとコストを圧倒的に変えることになりました。
そうなると、お金を送るのも、メッセージ同様に迅速かつ安くならないかと考える人が出てくるのは自然でしょう。また近年、デジタル決済の分野には多くの新規参入があり、技術だけでなく競争の面からも、国際送金がもっと便利になっても良さそうに思えます。