南米の雄「MercadoLibre」
南米で急成長を遂げたデジタル企業として、まずMercadoLibre(メルカドリブレ)を取り上げたいと思います。
MercadoLibre(直訳すれば「自由市場」)は、1999年、米国西海岸への留学経験を持つ創業者によってアルゼンチンで創業されたeコマース企業です。その後、ブラジル、メキシコなどにも拡大し、現在ではラテンアメリカ最大の電子商取引プラットフォームとなっています。
MercadoLibreは、さらにデジタル決済サービスに進出し、MercadoPago(直訳すれば「支払市場」)を運営しているほか、自らのプラットフォームを利用する業者に対して融資を行うMercadoCrédito(直訳すれば「信用市場」)も提供しています。
MercadoCrédito は、融資を行う上で、伝統的な金融機関よりも優位に立つ面があります。電子商取引プラットフォームを提供するMercadoLibreは、これを利用する業者の売り上げや在庫の動きをリアルタイムで詳細に把握できる立場にあるからです。
下図は、MercadoCréditoの貸出先に対するMercadoCrédito自身のリスク評価(赤字)と伝統的格付機関のリスク評価(青字)を比べたものです。例えば、左から5番目のドットは、伝統的格付機関が「低リスク(low risk)」と判断した一方、MercadoCréditoはリスク評価「E」、すなわち高リスクと評価した貸出先です。事後的にはこの貸出の損失率は8%超と高くなっており、MercadoCrédito、のリスク評価のほうが当たっていたことを示唆しています。
「ネオバンク」としてのNubank
次に、南米発で世界最大規模のデジタル金融機関となったNubankを取り上げます。
Nubankは、2013年にブラジルで設立されたばかりの、まだ10年も経っていないユニコーン企業ですが、今ではブラジルを中心に4千万人を超えるユーザーを抱えるまでに急成長しています。Nubankの創業者も、MercadoLibreの創業者同様、米国西海岸への留学経験を持っています。最近の報道によれば、Nubankは米国ナスダック市場への上場を計画しており、実現すれば時価総額6兆円規模(日立製作所やホンダに比肩する水準)の、世界最大規模のフィンテック企業となるのではないかとの見方が、市場を賑わせています。