事実、ブーム社には日本航空(JAL)や英国のヴァージン(Virgin)も出資しており、すでに予約購入計画も済ませているという。
また、日本国内でも2021年6月16日に宇宙航空研究開発機構(JAXA)がIHI、三菱重工業、川崎重工業、日本航空機開発機構などとともに、超音速旅客機の研究開発に向けた官民一体の協議会「ジャパン・スーパーソニック・リサーチ(JSR)」の立ち上げを発表している。同機構では2030年を目標に米ボーイングなどとともに超音速旅客機開発に参画することを目論んでいる。
(参考)「超高速旅客機、官民で開発」(「日本経済新聞」2021年6月17日)
距離の壁を越える選択肢はどんどん多様化する
今回のコロナ禍でリアルな人の移動を支えて続けてきた航空・鉄道・旅行業界は大きな痛手を被った。しかし、米デルタ航空が2021年から2022年にかけて客室乗務員1500人を新規採用することを発表したように、コロナ後に向けて立ち直りの兆しは明確だ。
(参考)「米デルタ航空、客室乗務員1500人新規採用へ 需要増に対応」(出典:ロイター)
また、コロナ禍でリモートワークが一気に普及したことで、企業内のデジタル化や働き方改革が一気に進むと同時に、新たな課題も見えてきた。
グーグルの「プロジェクト・スターライン」の取り組みは、多くの人たちが日常的にビデオ会議システムを使うようになり、便利だがエモーショナルなメッセージが届きにくいことにフラストレーションを感じている事実がブレイクへの後押しになるはずだ。
2020年代、ビジネス、オフタイムを問わず、相手とのエモーションの交換が必要な特別な場面に対応するための、距離の壁を越えるソリューションは確実に多様化するだろう。
リアルでは、超音速旅客機、リニア新幹線、空飛ぶタクシーなどが、バーチャルではビデオ会議システムの進化系サービスがわれわれ日本人の選択肢の中にも確実に入ってくると見込まれる。
それでは、距離の壁を越える新しいサービスの未来が全てバラ色であるかといえばそう話は単純ではない。開発投資に見合う十分な収益性を確保するために高い参入障壁を設けること、お客さまの期待や想像を遥かに越える感動体験(CX)を提供でき続けるかが、生き残りの条件になる。
いかに夢の技術ではあっても、「競争の経済原理」には抗えないのだ。日本が距離の壁を越えるビジネスで経済的な恩恵を期待するのであれば、技術だけではなく、「競争の経済原理」にも敏感になるべきだろう。