アマゾンのトレーラートラック(写真:ロイター/アフロ)
米アマゾン・ドット・コムが他社向け物流事業への投資を増やしている。これまで、自社の電子商取引(EC)で直販する商品の配送や、出品者の配送業務を代行する事業を通じて物流体制を拡充してきた。今後は、投資をさらに増やして規模を拡大する。アマゾンは物流大手の米UPS(ユナイテッド・パーセル・サービス)や米フェデックスと直接競合する存在になると米CNBCが報じている。
物流網急拡大、世界の配送ドライバー40万人
アマゾンで出品業者の販売実績調査を担当していた、米コンサルタント会社Eコマースクリスのクリス・マッケイブ氏によると、アマゾンは、あらゆる荷物をより迅速に、あらゆる場所に届ける、新しい形の米USPS(米郵政公社)を目指しているという。
アマゾンがEC商品の迅速配達や物流コストの削減を狙い、自社物流事業の開発に着手したのは14年だった。それ以降、物流ネットワークを拡大。6年後の20年には、全世界で40万人の配送ドライバーを雇うまでになった。
アマゾンの21年1~3月期における設備投資額は1年前に比べ80%増加した。これにより物流能力は同50%増加。アマゾンは19年時点で自社EC荷物の46.6%を自社便で配送していた。今や同社の物流事業は自社貨物の72%を賄うようになった。
自社物流資源で他社荷物を配達
CNBCによると、アマゾンはすでに様々な他社向け物流事業を手がけている。例えば英国では「ロジスティクス・アズ・ア・サービス」を展開している。米モルガン・スタンレーは、アマゾンがこのビジネスモデルを21年にも米国に導入すると予測している。
21年8月には15億ドル(約1600億円)を投じて建設していた航空貨物施設が完成し、業務を開始したと発表した。現在アマゾンの貨物機「Amazon Air(アマゾン・エアー)」は約75機ある。これを22年8月ごろまで80機超にし、22年末までには85機超に増やす計画だ。アマゾンはすでにUSPS(米郵政公社)の一部の荷物を自社の航空貨物機で輸送しているとCNBCは報じている。
18年には、米国で荷主と輸送業者をネットでマッチングする「Amazon Freight(アマゾン・フレート)」を始めた。ドライバンと呼ばれる箱型の荷台を持つトレーラー1台分の荷物を輸送するサービスで、アマゾンの車両3万台と、提携輸送業者の3万台で展開している。ウェブサイトでは集荷場所と配達場所の郵便番号、集荷日を入力すると、見積もり額が即座に表示される。
同社はECマーケットプレイス商品の倉庫保管と配送などを代行するサービス「Fulfilled by Amazon(FBA、フルフィルド・バイ・アマゾン)」を出品者に提供している。最近はこのサービスも自社出品者以外の業者に提供している。
消費者が米イーベイや米ウォルマートのECサイトで購入した商品の一部はアマゾンの倉庫から配送される。今では、ウォルマートで購入した商品がアマゾンの段ボール箱に入れられ、アマゾンのドライバーが配達することも珍しくないという。
アマゾンの事業成長パターンとは
一方、アマゾンと言えば、多くが「ECの巨人」をイメージする、だが同社にはECと異なるもう1つの事業クラウドサービス「Amazon Web Services(AWS)」がある。今やその規模は競合となるIT(情報技術)大手を大きく上回っている。
AWSのクラウドサービスは、もともと自社のEC向けシステムのために開発されたものだったが、同社は2006年にこれを他の企業に貸し出す事業を始めた。CNBCによると、アマゾンの元幹部であるレイチェル・グリーア氏はその理由について「余剰能力があったから」と話している。
前述したFBAは当初、出品者の配送業務を簡素・迅速化し、顧客満足度を高めることが目的だった。その後FBAのサービス基盤が拡大し、出品者以外にも提供できる余裕ができたため、一般開放することにしたという。
アマゾンはまず、自社の事業のためにあるプラットフォームを開発する。それが成功を収め、規模を拡大する。やがて余剰能力が生まれる。それを活用するべく外販を始める。これがアマゾンにおける事業成長のパターンなのだという。グリーア氏は、「今のアマゾンの物流事業拡大の状況は、クラウドサービス事業の拡大が始まった時期を想起させる」とし、「アマゾンのクラウドサービスはのちに業界を破壊した」と指摘した。
(参考・関連記事)「アマゾン、15億ドル投じた巨大航空貨物ハブ稼働 | JDIR」






