超アナログ「とくし丸」が見据えるDX

 以上を踏まえ、われわれが今、構想しているデジタル化の余地、DXについてご紹介します。まずはフェーズ1として、既存オペレーションのデジタル化を検討しています。とくし丸では、①その日に訪問するお客さまの好みの商品を積み込む、②前回の訪問時に頼まれたメモを確認して商品をピックアップする、③お客さまに応じて車両内の陳列を直す、などを行ってきました。また、スーパーマーケットのお薦め商品や、要望にはないけれどお客さまが喜びそうな商品も提案します。今まではそれらをドライバーが頭の中で処理していたため、経験値に依存していました。これを、デジタル化することにより、、当日の品揃えに生かせる環境をつくりたいと考えます。

 これにより、ミスの防止や売り上げの向上はもちろん、ビジネスモデルの競争力の源泉を強化していきます。ドライバーの仕事を自動化・システム化するのではなく、ドライバーが考えて動けるような PDCA を回す環境を整備して、お客さまとのつながりを深めることに集中できるようにすることが本当の目的です。

 フェーズ2は、携帯キャリアとの連携も視野に入れ、検討しています。事前注文の比率を増やせば、お客さまは買い忘れがなくなります。

 お客さまのITリテラシーが上がるのを待つのではなく、お客さまとの距離の近いわれわれが上手に誘発・サポートすることで、ビジネスモデルのDXを進めやすい状況にしていきたいと考えています。高齢者も手紙や電話ではなくスマートフォン、インターネットを上手に使いこなすことで、社会としての生産性が高まり、お客さまの生活もより豊かにできます。サポートする体制をしっかりとつくりつつ、進めていきます。

 とくし丸のDXを進めていく中で、大事にすることは「強み」を磨いていくこと。それとともに、アナログの余地を残し、人間が介在する温かさと信頼を大切にしていきます。