オーダーが多くて飲食店が少ないエリアを探す

 その後、KitchenBASEは拡大路線に入り、今年の3月に「KitchenBASE浅草」、4月に「KitchenBASE中野」をオープン。「KitchenBASE浅草」は浅草寺北側の住宅街、元自動車整備工場を改造し、地下1階、地上4階に22キッチンを設けた。「KitchenBASE中野」は長い期間、空いていた3階建ての物件、地下1階、地上3階に35キッチンを作った。

 筆者はこの6月上旬に「KitchenBASE中野」を訪ねたが、施設名に「中野」と付くもののJR中野駅からは程遠いという場所。同施設の住所は東京都新宿区西落合2丁目13-6で、都営地下鉄大江戸線・落合南長崎駅から徒歩10分、もしくは西武新宿線・新井薬師前駅から徒歩20分。すぐ近くに中野区立哲学堂公園があり、低層の住宅やアパートが密集、商店は100mほど離れたところにコンビニがある程度。住民が飲食店を渇望していたであろう立地だと、感じた。

「KitchenBASE中野」の周辺には商店が見当たらず、住民が飲食店を待望していたと感じた

 筆者が「KitchenBASEの施設を探すためにどのようなことを行っているのか」を尋ねたところ、山口氏はこう語った。

「クラウドキッチンの場所探しは、デリバリーのオーダー件数が多いところを探すことから始まります。しかし、デリバリーのオーダー件数が多いエリアとは、飲食店も多いということ、つまりライバルも多い。そこで私たちは『デリバリーのオーダー件数が多くて、かつ飲食店が少ないエリア』を探し出しているのです」

 そこで飲食店の数が少なくて、1店舗当たりのオーダー件数が多いところを探していく。それは、たくさん需要があるのにもかかわらず供給が足りていないということ。「すると、周りに飲食店が何もない住宅街が出てくる」と山口氏は語る。

「このようなやり方は、施設を構えたところで注文が発生するかどうかが分からないためにとても怖いことですね。しかし、私たちはこのデータを基にして戦いに挑んでいるのです。今までデリバリープラットフォーマーをあまり見掛けたことがないとわれても、データ上ではオーダーが発生している。『オーダー件数があるということは需要があるはずだ』ということで施設を構えるのです」(山口氏)

 これらの「探し出す方法」とは同社の独自戦略のために非公開となっている。

 「KitchenBASE中野」では6月上旬の段階で全35キッチンのうち、17キッチンが入居済み。これは山口氏が想定していたよりも早いペースだという。テナントの募集は、Facebookなどでの広告や、電話でアポ入れを行い、進めている。相手はデリバリーがうまくいっていて、拡大したいと思っている人。飲食をしたことがないが飲食で独立をしたい人などだ。

「KitchenBASE中野」のエントランス。下駄箱のようなスペースは、各キッチンで調理された料理を収納するスペース
「KitchenBASE中野」1階のオフィスルーム。ここで料理が配送員に渡される

 「KitchenBASE神楽坂」はオーダー件数が順調に増えてきている。21キッチンで当初1日100~200件だったものが、オペレーションを変えることで、現在400件。これが同社の大きなノウハウとなっている。