以前のコラムで紹介したネスレの共有価値創造(CSV)がまさにこの考え方を実践した例といえる。

 ネスレでは、「食の持つ力で、現在そしてこれからの世代のすべての人々の生活の質を高めていきます」の指針のもとで、自社の事業の要となる「水」に関わる課題解決を事業活動と結び付けて競争力創出を実現している。

 コーヒー豆農家の経済難に対し、高収量苗を供給し、収量・品質ともに高い原料を適正価格で調達することを通じて、農業生産者の収入向上とコーヒー品質維持・強化を図る。そして、消費サイドでは衛生的な水資源アクセスの整備を通じて、コーヒー消費を保証することを通じて長期的な市場創出を図る。

 このように、農業生産者の労働環境を是正する、一見リスクマネジメントの活動がビジョンに適合することで、持続的な利益創出につながっている。