「払わなさの個性」に着目すると回収率が高まる

 小山氏はこの督促という業務をデジタル技術でどう変革したのか?
「これまでの督促の仕方は会社のマニュアルやルールに沿って行うものでした。だから、金額の大小に関わらずほぼ同じやり方をしていました。それを、借りた人ごとに最適な方法・タイミング・内容で督促するようにするのです」

 例えば、1万円を借りている人に督促の電話をかける場合、10万円を借りている人にする場合と同じ方法だと過剰となり、相手がかたくなになり、返済を拒む可能性が高まる。そこで、少額の滞納者にはメールやSMSの通知で督促をするようにした。また、同じメールで督促するにしても、社会人と学生では生活パターンも異なるため、それぞれが反応しやすい時間にメールを送るようにし、無視されない可能性を高めた。

 こうしたパーソナライズした対応ができるのは、督促したときの反応をデータとして蓄積し、それを分析、属性ごとに最適な督促の方法を見つけ出したからだ。

 小山社長は「悪意を持って払わない人、うっかり忘れた人、支払いを遅らせている人、お金がないから払わないと決意している人など、『払わなさの個性』に注目すべきです」と言う。

 例えば、返済方法が金融機関への振り込みしかない場合、ATMやネットバンキングで振り込むにしても手間かかる。それをQRコード決済で行えるようにしたら「すぐ支払ってくれたりします」(小山氏)というから、返済の便利さも回収率向上に寄与する。

「分割払いの返済回数を増やすこともありますが、その場合は電話での個別交渉になったりします。しかし、直接、電話で話すのは嫌という滞納者もいます。そうした人には、ウェブ上で相談できるようにするなど、返済にかかるストレスを減らす督促の方法はいくらでもあります」

 新型コロナウイルスの影響で経済が痛み、初めてお金を借りたり、今までよりも借金額が増えるケースもあるだろう。今後について、小山氏は「2021年4月に改正割賦販売法が施行されたことで、少額の貸し付けサービスも出てくるでしょう」と推測するが、これは「今の若年層を見ると目の前の2万、3万円だけあればいいなという人が大半です」という現状を踏まえたものだ。