次につながらない失敗は、単なる経営資源の浪費

 ここまで「プロジェクトを開始するまでのプロセス」が軽視されており、「勝算が立っていないプロジェクト」が大量に立ち上がる要因をひもといてきた。筆者が「勝算」にこだわるのは、「勝算が立っていないプロジェクト」は成功率が低いだけでなく、うまくいかなかった場合に、その理由を特定することができず、次に成功するための示唆を得られない上、同じような失敗を繰り返すことになるからである。これを筆者は「悪い失敗」と呼んでいる(図2)。

 よく「失敗は成功の母」というが、これは「良い失敗」に限った話である。「悪い失敗」は次の成功に結び付かず、企業組織において何の学びももたらさない。「良い失敗」というのは、やるべきことを明確にして、できる範囲でやり尽くして、それでも期待に沿った成果を上げられないものである。この場合は、失敗したときに、その原因をたどることができ、解決方法を見いだすことができる。逆に「悪い失敗」というのは、やるべきことが何かが分かっていない、あるいは、やるべきだと分かっていることをやらずにプロジェクトを強行して失敗するため、原因が特定できず、何度でも同じ失敗を繰り返すことになる。

「良い失敗」は組織に経験や暗黙知を蓄積するのに役立つが、「悪い失敗」は投資したコスト、要員の工数、時間などが全て無駄になってしまう。そのため、企業は「良い失敗」を許容して社員のチャレンジ精神を損なわないようにしつつ、「悪い失敗」を徹底的に回避することが求められる。

 プロジェクト開始前の、「悪い失敗」を引き起こしている原因としては、前回述べたようにA. 企画段階での検討不足と、今回述べたB.要員の質と量の不足があるのである。

 次回は、失敗の可能性が高いプロジェクトを開始しないようにするための、需給バランスの取り方について紹介する。