プロジェクトに必要な要員リソースの割り当てができない理由

 プロジェクトにリソース(ヒト、モノ、カネ)を配分する意思決定を行うのは、プロジェクトではなく経営層の仕事である。しかしながら、前述のようにヒトのリソースに関しては、必要十分であるか否かをチェックしないまま、プロジェクト開始の意思決定をしていることがほとんどである。ただし、筆者は、必ずしも経営層の責任のみ追求することはフェアではないと考えている。

 そもそも既存組織から独立したプロジェクト組織をつくるならともかく、組織横断的なプロジェクトの要員リソースの兼務や稼働率を把握する手段をもっていない企業がほとんどである。プロジェクトを独立した組織にしないかぎり、一般的には既存組織横断、兼務で参画するメンバーの稼働負荷の実態を把握する仕組みがない。また、他部門のプロジェクトに兼務で参画する場合、本務部門の都合を優先してプロジェクトワークを後回しにすることがある。通常、人事評価は本務の組織で行うことが多いため、プロジェクトワークの後回しを回避することは難しい。

 結局は、組織横断的なプロジェクトワークに対応した、要員リソースマネジメントや人事評価の仕組みが整っていないのである。だからといって、人事/労務の仕組みを大きく変えなければならないと言っているのではない。プロジェクトに参画する要員は全社員の数%にすぎず、全社員向けの仕組みや制度を大きく変えることはない。数%の要員向けに特別ルールをつくればいいのである。

 前回、紹介した全社戦略に対して要員リソースの観点から選択と集中を行った企業では、プロジェクトメンバー数は本務との兼務者を含めて全社員の2%であった。また、この企業もMBO(目標管理制度)+成果主義の人事評価制度を導入していたが、約2%のプロジェクトメンバー向けに「目標達成できなくても、プロジェクトでなすべきことをなしていれば、その努力に見合った評価を行う」というプロジェクト中心の成果主義ではない特別ルールを一時的に適用した。