しかし、この「複数の通貨建ての資産を裏付けにする」という設計は、各国当局の強い警戒を招くことになりました。フェイスブックは全世界に20億人を超えるユーザーを抱えており、その20億人が使うアプリでリブラを使えるようになれば、各国のコントロールが及ばない通貨になりかねないからです。各国当局はリブラのようなデジタル通貨を「グローバル・ステーブルコイン」と呼称し、注意深く対応していくと表明しました。

 とりわけ、米国議会の反発は強いものでした。その理由は、米ドル建て裏付け資産の比率が「半分」とされていたことです。世界の為替取引の9割近く、外貨準備の約6割を占める米ドルは、米国当局にとってみれば圧倒的な基軸通貨です。このため「半分」というのは、米国議会の心情的には米ドルの地位低下に映ります。

 また、リブラを発行する「リブラ協会」が、本拠を米国ではなくスイスに置き、スイスの当局(FINMA)の規制監督に服する予定であると表明したことも、米国当局の規制監督を逃れる趣旨ではないかと警戒を招きました。

主要通貨のシェア(%)
注1:外為取引はBIS調べ。2019年4月。合計値は200%
注2:外貨準備はIMF調べ。2020年末。合計値は100%

「米ドル建て」の発行、そして「ディエム」へ

 米国議会の批判を受ける中でも、フェイスブックのザッカーバーグCEOは、米国がデジタル決済の分野をリードする努力を怠れば、他の国が主導権を握るだろうと主張し、なおリブラ発行への強い意欲を示しました。