福島県磐梯町のDXへの挑戦と実践

なぜ、人口3000人の町でデジタル変革が推進できたのか?

JBpress/2021.4.7

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土台作りをしっかりすることで職員・議員の総意で取り組めた

「バブルが弾ける前、世界の時価総額ランキング トップ10のうち7割は日本企業でした。しかし、今では50番手にトヨタ自動車がやっと入るくらいです。なぜそうなってしまうのでしょうか。それは、日本はバブル崩壊後、組織がシュリンクし、リストラをし、コストカットして、デジタル技術をICT化、つまり削ることにだけ使ってきたからです。その間に、米国のGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)、あるいは中国のバイドゥやテンセントなどは企業価値を創造するDXのためにデジタル技術を使ってきました。今の日本企業はこれらの企業の下請けのような状況になっています」(菅原氏)

失われた30年ともいわれ、この間に大きく水をあけられることになったわけだが、さらに自治体でこのような格差が起きてもおかしくない。

「総理大臣が率先してデジタル化を推進すると言って、全国の自治体が取り組もうとしています。しかし、私が見たところ、9割ぐらいの自治体はICT化のことばかり考えています」

 これら自治体の中には失敗を経験することでDXにシフトするところもあるだろうが、現状ではそこまで思考しているところはまだ少ない。そうした中、福島県磐梯町(佐藤淳一町長)は意欲的な取り組みを行っている。

 磐梯町は喜多方市、会津若松市、猪苗代町などに隣接し、総人口は3400人あまり。2019年11月、地方自治体として初めてCDOを設置し注目された。

「CDO設置前の準備段階から、総合計画をはじめとする諸計画の改正、条例・要綱改正に基づくデジタル変革戦略室の設置およびデジタル変革戦略の策定など、土台作りに1年以上を費やしました。その成果として、職員・議員の総意によるデジタル変革の推進が可能になるとともに、町のミッション、ビジョンに基づくデジタル変革の取り組みが行われるようになりました」(菅原氏)

 興味深いのは、デジタル変革戦略室の活動スタイルだ。

「完全ペーパーレス、完全クラウド、完全オンラインの完全デジタルネイティブ組織です。私は神奈川県在住で、民間企業の経営者をやりながら磐梯町のDXに携わっていますが、問題なく業務を執行できています」(菅原氏)

 審議会などもオンラインで行い、運用費用の削減や職員の業務の効率化も図られている。

地域のDX~オンライン審議会
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 磐梯町の取り組みは、DXを実践している好例と言えるだろう。多くの自治体でも同町を参考に行動に移してほしいと菅原氏は力を込める。

「大切なのは、アナログとデジタルは手段の選択肢にすぎないということです。場面場面で使い分けをしながら一番いい形にしていくのがいいのです。そこで、町民本位の時代にマッチした対応しなければならない、つまり町民のためになるのであれば、そうしたデジタルツールを使っていくということもやぶさかではないという話です。繰り返しになりますが、デジタル技術は手段であって目的ではありません。それぞれの自治体で何をしたいのかが問われているということになるでしょう」

行政のデジタル変革における「什の掟」(行動規範)
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