福島県磐梯町のDXへの挑戦と実践

なぜ、人口3000人の町でデジタル変革が推進できたのか?

JBpress/2021.4.7

いいね ツイートする

自治体でも取り組みがICT化でとどまってはいけない理由

 菅原氏によれば自治体のDXにおいては、「DXのDよりもXの方が大事」だと言う。

「DXで実現することは主に3つです。1つ目は『課題解決』です。課題解決とはマイナスをゼロにするとことです。自治体関係者の方は課題解決が大好きです。しかし、これだけでは駄目なのです。なぜなら、マイナスをゼロにしても、ゼロ以上にはならないからです。

なので、2つ目の『価値創造』が大事になります。ゼロを1に、1を10に、10を100にする、これがDXの得意分野です。

3つ目は『共生社会(新しい世界観、脱常識)』です。私たちが寄って立つ社会の前提条件自体、行政なら行政の仕組みや在り方自体がデジタルによって再構築されます」

 政府もDXの推進に力を入れている。経済産業省、総務省、農林水産省などの資料にもDXの用語が数多く登場する。与党の提言や「骨太の方針」にもDXが掲げられている。

「いずれもICT化(高度情報化)の推進とは表現していないことには注目すべきです。なぜならDXとICT化は大きく異なる概念だからです。ICT化の目的は、組織の効率化を主な目的として、業務を情報通信技術に代替することです。一方で、DXは、住民サービスの向上を主な目的として、デジタルを用いて新しい価値を生み出したり、仕組みを変えたりすることです」(菅原氏)

ICT化とDXの違い
拡大画像表示

 DXもICT化もデジタル技術を使っているので混同しやすいが、目線は大きく異なる。

「デジタル化には『Digitization(情報のデータ化)』、『Digitalization(情報のICT化)』、『Digital Transformation(デジタルによる価値創造)』の3つの分類があります。大切なのは紙をデジタルに置き換えるだけでなく、新しい価値を生み出していくフェーズまで持っていくことです」(菅原氏)

 ICT化のフェーズは業務の効率化や改善にすぎないが、DXは組織や人の仕組みを変えることになる。

「そういう点では、DXは経営そのものと言えます。情報システム部門だけではできません。海外では政府の中にCDOを置いている国も珍しくありませんが、これらの国では大臣など責任のある役職の人がCDOを務めています」(菅原氏)

 実は磐梯町でもCDOおよびデジタル変革戦略室は副町長の直下に置かれ、複数の部署を横串にする形で運用されている。

磐梯町組織図(令和2年1月1日現在)
拡大画像表示

 菅原氏はさらに、行政のDXを着実に実現するにはステップがあると話す。

「先ほど紹介した3つのフェーズ以前に、業務の可視化(BPR=ビジネスプロセスリエンジニアリング)を行うことが大切です。注目されているRPAについても、BPR、つまり業務の流れを分析し最適化することがある程度できた段階で導入しないと、むしろ非効率になります」

デジタル化の前にBPR
拡大画像表示