10万円の給付金配布の問題ともつながる
コロナ禍の中、10万円の給付金を配布するのにマイナンバーカードが機能せず、手作業に頼らざるを得なかったことは国民の大きな批判を招き、「デジタル化」を強く求める世論にもつながっています。しかし、仮に預貯金口座がマイナンバーと完全に厳格に紐付けられていれば、その口座に給付金を振り込めば良いわけです。したがって、「マイナンバーカードでは10万円を配布できなかった」という問題と、今回の預金流出の問題は、根底では重なっています。
もっとも、人々と当局との間のお金のやり取りとしては、通常、当局から給付金を貰うよりも、当局に税金を払う方が多いわけです。したがって、「当局が人々の預貯金口座を全て一元的に把握できるようになると、いきなりお金を徴収することもできてしまうのではないか」と、懸念する人も出てくるでしょう。
いずれにしても、「預貯金口座は把握されたくないが、給付金はすぐ欲しい」という「良いところ取り」は簡単ではありません。デジタル化を進める上では、「デジタルIDをどこまで資産や取引と紐付けることが許容されるか」という問題を避けては通れません。これは、単に金融や経済にとどまらず、社会のあり方全般とも関わる問題なのです。
デジタル技術と監視社会
デジタル技術は、「人々や取引の詳細なモニタリングを可能とする」という面があります。例えば、近年各国で監視カメラの台数は大きく増加しています。今や多くの自動車は、カーナビに加えドラレコも搭載しています。これらは、アナログ時代には考えられなかったことです。
このような街中のカメラの増加をどう感じるかは、人によって、またお国柄によって異なります。四六時中カメラが犯罪やあおり運転を見張ってくれていた方が安心だと思う人もいるでしょう。一方で、絶えずカメラに監視されているのは気持ち悪いと感じる人もいるかもしれません。