信託報酬の半分程度は販売会社へ行ってしまう
たとえば、ある運用会社が運用している投信の平均信託報酬が1%だとします。受託資産が100億円なら信託報酬による収入は1億円、資産1000億円なら10億円の収入・・・とはなりません。
投信の信託報酬は、運用の「委託者(運用会社)」と販売した「販売会社(証券や銀行など)」、資産を保管・管理する「受託者(信託銀行)」の3者で分け合う形になっているからです。その配分はおおむね、運用会社45%、販売会社55%、信託銀行5%くらい。運用会社が得る信託報酬は全体の半分程度、販売会社の方が高い割合になっていることが多いのです。
上記の例だと、受託資産が1000億円なら運用会社が得る信託報酬は5億円弱です。1000億円を受託して一般事業会社でいう売上高が5億円弱。この金額が高いか低いかは判断が分かれるところでしょう。
より少数精鋭と効率化が求められる運用会社
もちろん、販売会社を通さず投資家に直接販売する「直販投信」であれば販売会社への信託報酬の配分はないので、その分を運用会社が得ることになります。現実として、系列の販売会社をもたない独立系の運用会社は直販投信からスタートしたところが多いようです。
また、運用会社のなかには証券会社や銀行で販売している一般の公募投信だけでなく、主に機関投資家に向けた私募投信や企業年金基金などの運用を受託しているところがあります。そこからの信託報酬もあるので、公募投信だけが収入源というわけではありません。
筆者の私見では、運用会社では意外に事務作業が多く、バックオフィスに相応のスタッフが必要になるようです。また、投資家へのサポート体制やシステムには、常に拡充とアップデートが求められています。余計なお世話なのですが、運用会社の健全経営には少数精鋭と効率化が今後、より求められていくような気がします。
販売会社の構造改革は始まっている
低コスト志向という投資家ニーズが高まっていくことは間違いないでしょう。販売手数料がネット証券においてほぼノーロード化されたいま、これからはネット証券以外の対面販売における販売手数料と信託報酬が、より注目されていくはずです。そこでクローズアップされるのは、投資家の納得感と金融機関の効率化ではないでしょうか。