投資家が投信のコストに納得できないと感じる点は大きく2つあると思われます。1つめは、投資損益に関わらずコストが淡々とかかっていること。この投信のコスト体系は理解しているつもりでも、なかなか釈然としない面があります。2つめは、コストに見合ったサービスを受けているかどうかがわからないことです。
効率化については言うまでもありません。販売会社が大きな店舗と多くの社員抱えたままでは、投資家が「この陣容を賄うには・・・」と、うがった見方をしてしまうのも否定できません。インターネットやAI(人工知能)を最大限に活用することで、投資商品から市場動向、投資家のライフプランまで相談できる深い知見をもったアドバイザーの効率的な育成と配置が期待されます。
投資家からの預かり資産金額をベースにした賃金体系や転勤のない勤務形態、IFA(金融機関に属さない独立系のファイナンシャル・アドバイザー)の活用など、いわば販売会社の構造改革は一部の金融機関ですでに始まっています。投資家一人ひとりの目的(ゴール)を強く意識した理論的な投資アドバイスを実現する試みも始まっているようです。その取り組みや試みをもっと具体的かつ広く知らせることができれば、投資家の納得感も少しずつですが高まっていく気がします。
コスト以外にも目を向けよう
一方の投資家にも課題は残されています。低コストを志向するあまり、商品選択の眼が狭くなってはいないでしょうか。
限界まで低コスト化が進めば、わかりやすいモノサシで投信を比べることが難しくなります。自分の目的に合った投信を選ぶ眼を養ううえでも、投資哲学や商品設計、リスク特性などコスト以外の部分も比較検討する姿勢をいまのうちから心がけたいところです。
どの商品や市場も同じですが、過度な低コスト化は誰も幸せになりません。投信市場でいえば、その一翼を担う運用会社が疲弊して投信運用の継続性に不安が出てくることも考えられます。金融機関系列や預かり資産が大きいなど経営体力のある運用会社ばかりになっては、健全な競争原理が働く市場とはいえないでしょう。
投信のコストは今後、投資家と金融機関が共存できる“適正価格”にまで下がり、収れんされていくのではないでしょうか。そこで初めて、両者が同じ立場で同じ目的をもって資産運用に取り組むことができるようになると思います。これからの投資家は合理的かつ厳しい眼で金融機関を見守りながら、投信市場を育てる仲間として一緒に歩んでいくことが求められます。